第104話 お腹の虫鳴らし
ここは研究所裏庭。
決して裏庭が大きいわけではないのだが、ここで羽を休めているピクシーがいた。メルーだ。
彼女の先輩であるイズミの土がここにあるのだ。
研究所の歴史は古く、ラマ国が独立してもこの場所にある。
「イズミさん・・・あたしはあなたをこんな狭い裏庭に残して避難所に行けない・・・もし敵が侵入してきても絶対にこの場所を守るから、安心して眠ってください・・・」
★
ロッヂの子分達が加勢したとはいえ、全軍体力も限界に来ていた。トロルの半数は弓が刺さったままであり、紅いピクシーの炎魔法の傷も見られる。猫族もピクシー族も魔力に限界がきていた。そこに避難所からの伝令ピクシーがやってくる。
「ハイム様!!フク様!!ピカトーレンからの援軍です。まもなく援軍が到着します。」
それを聞いたフクとハイムは、お互いを見てうなずいた。そしてフクは指示を出す。
「我が優秀なるラマ国の上層兵よ!これより最後の指示を出す!!蛇陣最終陣形を至急行う!身体は重たいだろうがこれが最後だ、最後の力を振り絞り、蛇陣最終陣形を実行せよ!!」
フクの発言によりトロル達は動き始める、中央のトロルにあまり動きは見えないが、端のトロル達が陣形を崩さずに中央へと移動していく。そしてあっという間にトロル達が円陣を2列で作った。それにより、一部のエルフ兵を円陣の中に閉じ込めた
「よし、猫兵!ピクシー兵!連携魔法発動!!」
猫族の砂嵐魔法、ピクシーのウォーターガン魔法がトロルの作った円陣の中にいるエルフ達に降り注いだ。
「ウギャーーーー!!」
「ぬぉおおおお!!」
円陣内にいたエルフ達は苦しんでいるが、パタリパタリと円陣内のエルフ全員が倒れた。
かなりのエルフを蛇陣の陣形で戦闘不能にした。
それはまるで、蛇に睨まれたカエルが大人しく蛇の餌食になっている姿に似ていた。
しかしラマ上層兵の体力は全員完全に無くなってしまったのだ。ラマ国上層部兵士の殆どはその場で力尽きる様に倒れていく。
「ななな、なんておそろしいここ攻撃をしてきやがったんだ・・・しかし我が兵士はまだ3000、ピクシーも1000人はいる。クックック、勝った!遂にラマ国に侵入出来る!!」
ボ=ギールはこの戦争で恐怖を覚えたのか、手の震えが止まらずにいた。明らかに、フクという猫族の恐ろしさを身体で味わったのだ。
「あら、まだ侵入をさせるわけにはいかないわよ?ボ=ギール隊長」
「なななな、何!!誰だ!」
「あなた、趣味が悪いわねぇ、変な仮面被って。」
「お、お前は!ピカトーレンのエルマ!!」
遂にピカトーレン援軍がアルミナ平原に到着した。ピカトーレンの援軍は馬に乗って駆けつけた。
「相変わらず、戦闘の指揮が下手のようね。悪いんだけど、お願いされたから今回だけラマ国の援軍に来たわ!?昔みたいにやられたくなかったら立ち去りなさい。」
「クッ!!おのれ〜!おのれ〜!!」
目の前はラマ国なのに入る事が出来ない。ボ=ギールは一歩後ろに引き、エルフ隊に指揮を取る
「おおおお前たち。弓矢構えーーー!」
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!
「グワ!」
「アギャ!」
エルフ兵が弓を射ろうとすると、レンジャーの武器、
「ボ=ギール隊長、もう一度言うわ、昔みたいにやられたくなかったら立ち去りなさい!」
数は圧倒的にバドーム軍が多い筈なのに、ボ=ギールはそんな事も忘れてしまうくらい怯えているように見える。
「ク・・・ぜぜぜ全軍、大至急本陣まで引くぞ!しょしょ食事をした後に再編成を・・・」
ボ=ギールは挙動不審な行動の中指示を出すが、本陣方面から数人のレンジャー隊がかけつける。そのレンジャー隊の先頭には、リサがいた。
「エルマ様、敵本陣の食糧は全て焼き払いました。」
「ご苦労様リサ。ってあら?健太がいないわねぇ、何処へ行ったの?」
「それが、全て燃やすのは勿体ないからって、なんか自分の好きな食糧だけを荷馬車へ入れてます。昔から意地汚いですよ、健太は。」
リサは頭を抱えながら伝えると、それを聞いたエルマも軽いため息を吐きながら同じ様に頭を抱えた。
既にバドーム帝国第4部隊本陣には黒煙が上がっていた。それをみたボ=ギールはガクンと膝をつき、目を丸くして見つめていた。
グゥゥゥゥゥウウウウウウっと、腹を鳴らして・・・
そして荷馬車1台ゆっくりと黒煙が上がる方向から近づいて来た。レンジャー隊の1人が馬の手綱を操り、荷台の上には人がいる模様。
「んもぅ、お行儀がいつも悪いわねぇ。」
「あなた、目立ちたがり屋さんなのかしら?」
「健太」「健太」
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