第103話 動く敵本陣

 戦闘開始から時間はかなり流れた。まだバドーム軍は侵入出来ずにいた。しかしラマ国上層部全員に疲労が見えてきた。敵も疲労はあったが、全く疲れていない者がいた。そう、遠くから弓しか射ることしかしていないエルフ8000人である。


「クックック敵は疲れを見せているのがはっきりとわかってきた。これよりエルフ隊もあの醜いトロルの壁に突入する!いくぞー!」


 ボ=ギールの掛け声と共にエルフ8000人が動きはじめた。

隊長もいる事から、このエルフ達が敵本陣で間違い無さそうだ。


「エルフ隊、こちらに向かってきます!!」


 フクもハイムも疲れを見せていた。しかしラマ国上層部全員は弱音を吐かない。既にゴブリンとオークの種族はほぼ絶滅させ、疲労はあるものの、士気は高くなっていたのだ。


 しかし安らぎの時は無い。直ぐにエルフの集団が接近して来た。


「あともう一踏ん張りだ!絶対に進行を許すな!」


 エルフがトロルに立ち向かう、トロル1人に対し、10人くらいでトロルの足を狙いダガーで攻撃をする。トロルを弱らせようとするが、トロルは大きなコン棒を振り下ろし応戦、エルフは戦闘不能に。そうなると、また次のエルフが10人でトロルに立ち向かう。その繰り返しではあるが・・・


シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!


 エルフの弓矢だ!一部のエルフは援護射撃してきた。トロル達に命中し、壁が一部崩れかける。


「し、しまった!!」


 フクは少し焦りを感じながら指示を出す。


「猫兵は弓を構えているエルフを狙え!トロルは1列目と2列目を入れ替わるのだ!!」


フクの指示に従い、トロルと猫兵は動くが・・・


シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!


また弓矢だ、1番ダメージを受けているトロルが遂に動きが止まった。


「クッ!!これまでか」


「クックック、とどめだ!もう一度、弓矢の雨をお見舞いしてやれ!!」


シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!


次の弓矢はいかにも倒れそうになっていたトロル1人だけに狙われた。全身に弓矢が刺さり、ついにその場に倒れたのだ。


「よし!!道は空いたぞ、野郎ども、突撃だ!」


「うぉぉぉおおおおおおお!!」


 倒れたトロルの場所にエルフが雪崩れ込んでくる。他のトロル達も陣形は崩さずに応戦はするが・・・


 遂にエルフ部隊に侵入を許してしまった!!


・・・かに見えた。


「よし、俺様がラマ国侵入第1号だ・・・」


ザザン!!


「え?あら?俺様、斬られてる?・・の・・れ?」


侵入したかに見えたエルフだが、その場で倒れた。


フクはその光景を見た!


「フク隊長、俺達ロッヂ一味も加勢するぜ?遅くなってすまなかった!!」


「お前たち・・・すまん!!」


 以前山猫族と言われ、かつては敵だったロッヂの子分達、わずか20人程だが、気持ちは同じだ。倒れたトロルの場所にロッヂの子分達が加勢し、侵入を防ぐ。





その頃、避難所のシエル達は


「師匠、ここは私達も戦いに行くべきでは?」


 避難所にて待機しているイルグルがシエルに声をかける。


「いや、ワシらはここで耐えるのだ、勝手な行動をとると上層部に失礼じゃろう」


「はい・・・ですがさっきから僕、探しているのですが、メルーちゃんがいないんです。まさか戦場に・・・」


「いや、おそらくメルーは・・・」


そこで急にピクシー上層部が叫びながらやってくる。


「朗報!!朗報!!バッド王、朗報です!」


「む?どうした。」


「ピカトーレンからの援軍です。まさか、本当に援軍が来るとは!!」


「・・・健太・・・大儀である・・・」


バッドはその一言を小声で言い、ずっと下を向いてしまう。

バッドの下に敷き詰められた石床に雫がポタリ、またポタリと落ちていた。


「まだ、国を守れと言う事だな・・・」



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