第100話 誠実な女

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2年前 マーズ


「よーし、それじゃあ次の将来の自分発表をーそうだなー・・・リサに発表してもらう。」


「へ?アタシ?

はい!えっと、将来の自分。リサより皆んなへ。

 私は将来きっと、ピカトーレン上層部、レンジャー親衛隊隊長になっています。

弓スキル、弩スキルは自分にとっても得意で、更に精進して、ピカトーレン1番の矢使いになっているでしょう。

 良い成績でこのマーズを出て、ウェルザ国王様、ディアネイラ王女を、命をかけて守る事を決意し、エルマ外交官様の元で親衛隊になる事を誓います!

 それが、あたしの夢、将来の自分です!」


ぉぉぉおおおおおお〜〜〜!!


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


「うむ、リサならきっと、その夢を叶えられる。頑張れよ!リサ!」


「はっはい!」


「よーし、それじゃあ次の将来の自分発表をーそうだなー・・・んじゃ、健太に発表してもらおう。」


「お、俺?

わ、わかった。将来の自分。健太よりお前らへ。

 え〜っと、将来の俺はきっとピカトーレン1番のボール足使いになってます。

ボールを足で操る競技を、ピカトーレン中に知ってもらい、そのスポーツの人気を高めたいです。

 そしてそのスポーツ名をサッカーという名称と広め、バピラ全域で有名なスポーツにする。

 それが俺の夢、将来の俺だ! おしまい。」


「・・・・」

「・・・・」

「・・・ギャハハハハハハハハハハ!」

「なーに言ってんのかさっぱりわかんねー、なーにが足使い、なーにがさっかあだ!ギャハハハハハハハハ!」


「ハハハハ、よし、健太、そのすぽおつとやらが、人気になれば良いな!?」


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 健太は忘れていなかった。リサのレンジャー隊入隊の熱い想い、レンジャー能力の嫉妬、レンジャーへの取り組みの強さを。


「え?え?待って待って!アタシは別に今すぐにってわけじゃ・・・」


「あら、良いのね。本来はあらゆるテストを行い、選ばれた者だけがレンジャー親衛隊になれるけれども・・・勿体無いわねぇ。」


「え?え?え?」


「冗談よ、わかったわ、じゃあこうしましょう。リサ、あなたなら知っていると思うけど、親衛隊に入ったら訓練、実戦関係ない程の厳しい鍛錬が待ってるわ?

 今から親衛隊をラマ国援軍に向かわせるけど、あなたも同行しなさい、リサ。」


「は、は、はい!!」


 なんと、リサがあっさりピカトーレン上層部レンジャー親衛隊と共にする事になった。


(・・・無理なお願いと思っていたが、言ってみるもんだな、やれやれ。)


「ありがとう、エルマ。んじゃあ俺は戻って・・・」


「何を言ってるの?ラマに戻るのは、認めないわよ?さっき言ったじゃない、あなたは危険な存在だと。」


 確かにエルマは正体を知らない健太は危険な存在だと言ったが、健太から見てもエルマは、いや、ピカトーレン上層部は危険な存在だと鳥肌が立つのであった。


「じゃあ俺は?俺はどうすればいい?俺はこれでもラマ国外交官だ、バッド王に援軍を知らせる義務がある!」


「確かにそうね、でも、知らせるくらいなら、ピカトーレン伝令部隊で充分よ?」


「グッ!」


 ダメだ、単純な事だからなのか、エルマと会話をしても、あー言えばこー言われ、こー言えばあー言われ、これでもかー!と言っても、あれでもかー!っと言い返されてしまう。

 だからといって魔力を披露するわけにもいかない。

健太は複雑な気持ちで、なんとなくエルマとの戦いに負けてしまったと感じていた。


パン!パン!パン!


 エルマは両手を合わせて3回音を立てる。直様衛兵がやって来た。


「お呼びですか?エルマ外交官。」


「このリサをレンジャー親衛隊宿舎に案内しなさい。隊長には伝えておくわ!?」


「かしこまりました。」


 衛兵の後ろをリサはついていく、やがて階段を下っていく足音しか聞こえず、やがて足音が遠くなっていった。


「さて、あの娘がいなくなったから、健太、あなたに話があるわ?」


 健太は焦っていた。健太の中では随分とアディショナルタイムと感じていた。


「急ぎたい気持ちが顔に出てるわよ?顔に出る者はね、攻撃を全て読まれ、死ぬわよ?」


「・・・わかったわかった!負けたよエルマ!さあ、早く話を聞かせてくれ!」



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