12章 ボ=ギールの最後
第99話 威圧
「あなた達、人間?」
「・・・そりゃそうだ。」
「随分若そうだけど、まだ未成年じゃない?」
「・・・俺もこの女も16歳さ、ラマ国の外交官をしている」
「そんな事は聞いていないわ?ラマ国に人間がいる事が問題なのよ、あなた、無断出国者でしょ!」
「無断出国者?何だそれ?」
「家は何処なの?お父さんお母さんは何処にいるの?」
エルマ外交官は次から次へと質問を続ける。その顔は何処か冷酷で、何処か意地悪な表情に見えた。
(この年増ヤロー、さっきから質問ばかりしやがって!)
少しイラッとしてきた健太だが、リサは違った。リサは少し緊張した表情でエルマに話しかけた。
「エルマ様、今はラマ国崩壊の危機なんです!もうあまり時間がなくて・・・ピカトーレンからの援軍要請を求める為にアタシ達はエルマ様に会いに来たの!?」
「そう・・・バドームから圧力があったのね!?でもそれは無理よ!?理由は2つあるわ!?1つはあなた達は私の質問を全て答えてない事。もう1つは、ラマ国中央図書館が火事になったんだってねぇ、それバドームの仕業らしいじゃない?それを人間のせいにして未だに謝罪がないわ?私だけではなく、国民全員がラマ国に対し怒っているわよ!?」
健太は威圧を感じた。流石に大人の女性、一筋縄ではいかないと確信した。
このままでは・・・援軍は夢のまた夢だ。
「だったら今答えてやるよ、俺は生まれも育ちもバピラじゃない!だからレンジャーの能力もない!俺自身も何故どうやってこのバピラにいるのかわからない!ただそれだけの話だ、ラマ王の息子であるバッド直々に外交官のオファーがあり、俺はそれを引き受けた。
それともう一つ、図書館の火事はバドームのカイトというピクシーの仕業だとわかってはいる。人間の仕業と勘違いしたバッドは反省している。近いうちに謝罪に来るだろう。
以上だ!」
言葉足らずなのはわかっている。でも時間がない。健太は自然と両手を合わせて祈る様にグッと力をいれていた。
エルマは腕を組み斜め上を眺め、何やら考えている。
そこにガイが口を挟む。
「なあ、若いの、バピラに来たのがいつかは知らねーが、ピカトーレンにいたんだろ?他の国じゃ、黙って絶対に住む事はできないからなぁ、もしかして施設出身か?」
「うん、施設の名前はシュールという。施設長のシュケルが管理している。ウルフのリョウ、ラルフ、リザードマンのマルス、ノーラ、そしてここにいる人間のリサと俺が住んでいた。それがどうかしたのか?」
それを聞いたガイまでも斜め上を向き、考え事を始めてしまった。そしてエルマの頭の中が纏まったのか?ゆっくりと、喋り始めた。
「生きている限り人は間違いや勘違いはあるわよ!?
ピカトーレン国民には、ピカトーレン内交員から上手く伝えておく様に言うわ。ただね、あなたの身元が全く理解出来ないのよ、それがどうも引っかかるわねぇ。バピラ出身じゃないなんて事になると、幻獣の力により、生み出された存在に見えるのよ!?あなたは危険だわ?危険な存在ね。そんな危険な人間を他国に行かせるわけには・・・」
「妄想よ!?」
鋭い感を持つエルマに対し、リサが健太を庇ったのか、真剣な顔でエルマに話しかける。
「エルマ様、健太は4年前の12歳の時突然シュールの施設にやってきたわ?おそらくバドームのエルフ達に両親を殺されたんだと思います。アタシの両親の様に・・・」
リサは未だに健太の事を余り理解していない。一度時空を越えてやって来た人間と疑った事もあったが、未だに信じられず、リサなりの憶測をエルマに話した。
「え・・・あ・・・あ・・・あ・・・」
先程まで斜め上を向いて、考えていた何ガイが口をパクパクしながらリサを見ている。
「あら、ガイ?どうしたの?」
「あ・・・あ・・・何でもない・・・」
ガイはそのまま後ろに振り向き、小さくなる様に寝転んだ。体調でも悪いのだろうか。
「まぁ、黙っててもいずれは俺のことを知っていた方が良いだろうから、俺の事を話すぜ?4年前に俺は今から45億年前の過去から闇の幻獣、ダークルカンにバピラに連れ去られた。」
「あらまぁ、エルフの幻獣魔法に?」
エルマは驚いていた。この話を信じて聞いてくれるのだろうか。
「ラマ国中央図書館の資料によると、45億年前、巨大な隕石が太陽、そして地球と衝突し、人類は絶滅したらしい。しかし、45億年後の今、人類は再び進化し今生きている。45億年前は、種族なんていなかった。約80億人程の人間が地球には生きていたんだ。」
「・・・つまりあなたはこの時代の人間じゃないって事なのね?」
「そうだ」
「なかなか面白い話をあなたはもってるわね。すごく興味があるわ!?その話が嘘でも本当でも。」
健太は少し緊張した。普段ならしないが、なぜかこのエルマの前では不思議な威圧に遭い、緊張するのだ。
「俺の自己紹介は終わりだ。エルマ、人間なら助け合いていう習慣がある筈だ!力を貸してくれ!」
「・・・一つ条件があるわ。あなた、ピカトーレンに戻ってきなさい。それが条件よ、あなたがピカトーレンの国民に戻るならば、援軍を至急向かわせるわ!?」
「・・・」
(ピカトーレンか・・・勿論人間の国だからなぁ、戻るのは当たり前か・・・)
健太は思い出した。シュケルとシエルのプロセ"ピカトーレンとラマを再び一つにする計画"だ。それを考えると、ピカトーレンに戻る戻らないは自分にとって損はないと判断した。
「わかった!戻る事を約束する。
それともう一つ、お願いがあるんだ。」
「お願い?言ってみなさい。」
「コイツを・・・リサを、ピカトーレンのレンジャー隊に入隊させてくれ!」
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