第98話 ピカトーレン外交官

「ボ=ギール様!!ボ=ギール様!!」


「何事だ!騒々しい!」


「はぁ・・・実はラマの猫族使者が参りました。」


「何!使者だと!?」


「中に入ってもらいますか?」


「よし!通せ。」


(いや!待てよ!敵が入ってきたら1:1か・・・)


「ま、待て!待つのだ!!」


「どうしました?」


「5人程ワシの護衛につけ!」


「そっ、そんなにですか?その部屋に5人、使者とボ・ギール様が入って7人は狭すぎます!」


「黙れ!指揮官様が死ぬかもしれんだろうが!」


「かしこまりました。揃えますのでお待ち下さい。(死んでしまえ)」


 紅ピクシーのカイトとのやりとりのせいか、すっかりボ=ギールは臆病風に吹かれてしまっていた。

暫くしてボ=ギールの護衛5人が部屋に配置された。少し気分が落ち着いたボ=ギールはラマの猫族使者を中に入れる様に指示をした。


「よいかお前たち!使者が入り座ったら、お前ら5人で一気に槍で突っせよ、5方からの攻撃なら避けられまい、ククク」


「ボ・ギール様、使者を連れて参りました」


「うむ、入るがよい。」


「中におられるのはバドーム帝国第4隊長、ボ=ギール殿とお見受け致します。ラマ国上層部特殊部隊長フクである。失礼ながら、話はここでさせてもらう。」


「いやいや、よくぞ参られた、中でゆっくりされよ」


「中で殺気を感じる為、ここでよい!ボ=ギール殿、兵士2万を連れ、アルミナ平原で何をしている?何が望みだ?」


「・・・クックック!殺気か、よくぞ見破ったわい。それにしても一人でここに来て、生きて帰れると思っているのか?今から死ぬ貴様に言ったところで、意味はなかろう。」


「残念ながら、お前の様な大した奴じゃない者にやられるわけにはいかないんでな。ラマ国の実力を思い知る事になる様だな。」


 フクはそう言うと、魔法を使い、部屋入口の扉を丸ごと破壊した。お互い初めて顔を合わせた。


「ほう、使者は猫族、部隊長は猫族・・・か、しかし扉を破壊した魔法は俺様が求めているものではない。貴様らラマ国に光魔法を使う人間のガキがいるはずだ。そいつの息の根を止めるのが俺達の目的よ!」


 フクは少し驚いていた。何故光魔法の事を知っている?実際は健太により光魔法でやられたが、その事をフクは知らない。


「その光魔法とやらの使用者を知りたければ、この戦争に勝たないと無理だな。我らラマ国上層部の陣形、崩せるものなら崩してみよ!兵士は450人だが、1人50人分の働きはする。精鋭ばかりの我らの部隊は誰にも負ける事はない!」


「クックックちょっございな事を!誰か!今すぐコイツを捕らえい!」


 しかし既にフクは霧魔法で話をしていた。フクの姿はうっすらとボ=ギールの前にあったが、自然と消えた。


「っちぃ、魔法剣士系の猫族か!フクとやらめ、生意気な小僧だわい。よし、今から陣形を整える!皆の物、準備せよ!」

ついに、バドーム兵士も陣形を整えるのであった。





「バッド王、国民ほぼ避難所に待機してます。」


「うむ、ハイムよ、大儀である。あとは・・・健太だな・・・」


「ですね、頼むぞ、健太・・・」


「交渉が上手く行っていれば、そろそろピカトーレンから援軍が動きだした頃だろう。健太よ・・・急げ!」


 バッド王の予想では、今頃援軍を引き連れて、ラマ国へと近づいていると予想していた。

しかし実際は健太は、リサと共に捕われているのである。





「ガイ?どうしたの?」


 健太とリサの前に、1人の女性が姿を現した。見た目30代前半の様に見える。何となく、女性を磨いている様な綺麗な方だ。


「あ〜〜すまんすまん!エルマ!!」


「私もね、決して暇ではないのよ、くだらない用事なら戻るからね。」


「いやいや、この少年のことなんだがねぇ」


「ん?この子?」


どうやらこの中年男性の名前はガイで間違い無さそうだ。そして・・・


(エルマ外交官って・・・女だったのか!!)



第12話 ボ・ギールの最期へつづく

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