第96話 多勢に無勢
「し、しまった。おい、ボク達!通しなさい!」
リョウは階段上に回り込み、両手を広げて通せんぼをした。
「ラウル!何してる!お前も通せんぼしろ!」
「え?え?ぇぇぇぇぇえええええええええ!」
ラウルはオドオドしながら階段中央に立ち、小さく手を広げて通せんぼをした。
ハスキーと白いウルフは互いに向き合い、何やら話し合う。そして出した決断をリョウとラウルに向かってハスキー系ウルフが述べる。
「ボク達、この行為はテロの侵入とみなす事になる!今から緊急警報を鳴らすからな!」
★
健太は足に魔力を集中し、素早く登る。しかもリサを両手で抱え、上へ上へと階段を進む。つまりはお姫様抱っこと言う奴だ。
「け、健太!恥ずかしいから降ろしなさい!」
「恥ずかしいって誰もいないから誰も見てないぞ?」
「だったら尚更降ろして!」
健太は一度止まり、リサを降ろす。少しシワになった服の部分を3度4度振り払った。
「健太、凄いわね、魔法を使ったのね。」
「ああ、そういえばリサの前で初めて使ったな。」
「それにしても不思議ね〜、何で健太にだけ魔力があるのかしら・・・やっぱり健太って本当にピカトーレンではない場所からの・・・」
「まぁ〜そこはさ、今度落ち着いたら話すさ、とにかく今はエルマに会いに行こうぜ?」
リサは無言でコクリと頷き、2人は更に上へと上がり始めた。
【ゥゥゥゥウウウウオオオオオオオオオオ!!】
警報だ、遂に警報が鳴り始める。
健太は既に12階迄登っていたが、この警報が鳴ると同時に、上からも下からも足音が近づいてくる。
健太とリサは、12階のフロアへと逃げ込んだ。
12階にも何人もウルフや人間、リザードマンがいた。見るからに上層部だ。勿論味方はいない。
(ああ・・・リョウ、助けてくれ!!
・・・って来るわけねえよな・・・)
多勢に無勢、健太とリサはあっさりと捕らえられてしまう。健太とリサはそのまま両手を縛られてしまった。
「ゼェッゼェッゼェッ、苦労かけやがって!このスパイが!人間になりすました猫族が!」
ハスキーのウルフは健太を縛った後、そう言ってきた。
「何言ってるんだ!俺は人間だ!エルマ外交官に会わせろ!それにリョウは!?ラウルは!?」
縛られながらも健太は暴れる。
「コラ!暴れるな!」
「離して、離してよ!」
「そうだ!離せ、お前ら!リョウは?ラウルは?アイツらに何かして見ろ、ただじゃ済まさないからな!」
「静かにしなさい!」
そのまま何処かに連行されるみたいだ、拷問されるのだろか・・・
「じゃあ伝えてくれ!今ラマ国はバドーム帝国から圧力をかけられている。ピカトーレンからの援軍要請をラマ国王は望んでいる。俺は人間ではあるがラマ国外交官だ!援軍を要請する!エルマ外交官、決断してくれと、それを伝えてくれ!!」
「黙れ!!今ここで、殺してもいいんだぞ?この化け猫め!」
2人は連行され、20階にある個室に案内され、施錠された。監禁状態になったのだ。魔力で壊し、脱走するのは今の健太なら出来るだろう。しかしバッド王はそんな事望んじゃいないだろうと判断した。バッド王の為ではなく、ラマ国民の為にも絶対にピカトーレンの援軍が必要だ!
しかし監禁されたとはいえ、誰もいない。これでは時間だけが過ぎてしまう。どうすれば・・・
「フフ、若いの、お前さん何をしたんだ?」
!!誰かいる!周りを見ると反対側の個室に中年っぽい人間がこっちを見ている。
「・・・あんた・・誰?」
恐る恐る、リサが聞いた。
「な〜に、俺も勝手にここに侵入し、捕まってしまったおっさんだよ。」
(この人間もラマ国の?いやいや、ありえない。どんな奴なんだ?このおっさん。)
「俺はラマ国の者だ、外交官に用があって来たが話すら聞いてくれずにこの部屋さ。」
「へぇ、じゃあ俺と同じじゃな。俺も外交官に用があったけど、会わせてもらえず監禁さ」
ピカトーレン上層部を目指し、上を目指すも捕まってしまった健太とリサ。20階にて監禁される事となり、そこにいた謎の中年男性は一体。
又、リョウとラウルの行方は・・・
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