第95話 子供扱い

 一方、ボ=ギールの侵攻を防衛する為にフクは、アルミナ平原からラマの領地の境目で陣形を作った。


「壁職!1列に陣形を整えろ!」


 フクの一言で上層部のトロル達が横1列に並ぶ。


「次!援護火力職!1列に陣形を整えろ!」


 次は上層部の猫族がトロルの後ろに1列に並んだ。


「最後に、回復職!1列に陣形を整えろ!」


 トロルと猫族の更に後ろに、ピクシーが1列に並んだ。


「良いか!もし敵が侵入を試みた場合、我らはこの陣形にて侵入を阻止する!これが王の命令であり、ラマ国民の命令である!我ら500人に対し、敵は2万人。明らかに不利である。しかしながら、戦いは人数ではない!僅か500人で2万や5万人の敵を撃ち破ってきた我らのご先祖様達の教えに対し、決して失礼の無い様に知恵を絞って我らは戦う!絶対に負けるはずがない!」


「うぉぉぉおおおおおおおおお」


 フクの鼓舞により、綺麗な陣形で並んでいるラマ国上層部兵士達は士気が高くなっていた。


「お前達は陣形を崩さずに待機せよ。私は敵将ボ=ギールの不審な動きの理由を探る為、奴に会ってくる!」





 そしてここはラマ国第1エリア避難所。ハイム他50人の上層部達は避難所へ国民を誘導していた。


「はーい、時間はたっぷりあります。押さないでゆっくり避難所の中に入ってください!避難所の中もかなり広いのでゆったりと使えますよー」


ハイムの声かけに、国民は黙々と避難所へと集まりつつあった。ピクシーの一部では、ハイムに声をかける物も・・・


「ハイム様、戦争が無事終わって落ち着きましたら、是非デートしましょうね♪」


「待って!私が先にデートするんだよ?ねーハイム様〜!」


「申し訳ありませんが、国の危機です。今はお答えできません。立ち止まらずにお進みください!」


ハイムは冷静だった。普段なら甘い言葉には弱く、自分の、スケジュールを確認し、予定を入れるのだがハイムは我慢した。





 そして再びピカトーレン街、健太は遂にビルに到着した。


「着いた。ここだ!」


 健太達4人は入口から入ると普通に1階、2階、3階はショッピングエリアだったのか、国民が買い物をしている。4階へと続く階段には、ウルフ2人が立っている。明らかに関係者以外は通れない感じがする。


 間違いない、上層部関係だ。緊張するが時間がない、早い事エルマに会いに行かないと。健太は2人のウルフに近づいた。


「あの、エルマ外交官に会いたいんだけど・・・」


声をかけたが2人共俺を無視した。


「な、なあ、エルマ外交官に用事があるんだが?」


 もう一度言うと2人共健太を見た。そしてハスキー系の毛ヅヤのウルフが声をかけた。


「ごめんね、ボク。無視しちゃって、私達にまさか声をかけて来るとは思わなかったんだよ。一体どうしたんだい?迷子かな?」


 完全に子供扱いされている。そしてもう1人の真っ白なウルフが声をかけた。


「エルマ様は迷子の子を担当はしていないよ?とはいえ迷子って歳でもなさそうだし、一体何処のお店を探しているのかな?」


まぁ、そう答えられるのは当たり前か・・・


「おじさん達!俺は遊びに来たわけじゃないんだ。俺はこう言う物だ!」


健太はバッド王から貰ったラマ国上層部の証を見せた。


すると、ハスキー系ウルフの応えは。


「おや?これはラマ国のバッヂだねー。何処かに落ちていたのかい?」


そして白いウルフは。


「ラマ国の上層部もこんな大切な物を紛失するなんて、あの国も落ちたもんだ。」


だめだ!んじゃあ、この言葉でどうだ!


「俺はラマ国上層部外交官の木下健太と言う者、大至急エルマ外交官に会わなくてはならないのだ!」


「・・・・」


「・・・・」


健太は予想はしていた、予想はしていたのだが。


「アッハハハハハ!!」


2人は予想通り笑っていた。


(クッ!やはりまだ子供の俺なんて誰も信じやしないか・・・)


「いいかい?ラマ国には人間はいないんだよ?マーズで教わったとは思うけど、忘れたのかな?アハハハハ。」


 やはり、奥の手しかない。出来れば使いたくなかったが、ラマ国崩壊の危機なんだ、エルマに会わないわけにはいかない。健太はリサの顔を見てアイコンタクトを送る。

そして素早くダッシュし、笑って油断している2人の間をすり抜け、階段を登る。


 しかしアイコンタクトはリサには届かなかった。リサは呆然とその場で立ったままだ。


「何してる!リサ!行くぞ!」


「え?あ、う、うん!」


 ハスキーと白いウルフはキョトンとしてしまった。まさか子供扱いした人間が侵入するとは思ってはいなかったからだ。

健太とリサは階段を登る。そして姿が見えなくなった時、ウルフ2人も事の重大さに気付いたのだ。


「し、しまった!おい!追うぞ!」


「おう!コラー!待ちなさい!!」


 ウルフ2人は四つん這いになり健太とリサを追いかけようとする。

しかし、ここでまた足止めとなる。


「おっと、健太達を追うならば、俺達を先ず倒さねばならないぜ?」


 リョウだ。リョウが更にハスキーと白ウルフの足止めをする。


「ちょ!ちょっとリョウ君!僕まで変な事に巻き込まないでください!」


 ラウルは非協力的ではあったが、健太達はエルマと会う事が出来るのだろうか。

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