第89話 希望は持つもの

「イズミさん!!何があったんですか!?」


「あ・・・メルー・・・来ちゃ・・・ダメ・・・」


誰かいる!!この人が・・・この人がイズミさんを・・・


パタタタタタタタタタタタ


羽の音・・・いるのはピクシーの様ね・・・


「そこにいるのは誰!?出てこないと攻撃するわよ!!」


 なんで隠れたままなのかしら、あたし達ピクシーは光粒子を流しながら生きているから、大体犯人は判るのよ、紅い光粒子ならバドームの使者だわ。もし蒼ならピカトーレンの誰なのかしら・・・


「水属性に宿る我が力よ、力を貸して!!ウォータースプラッシュ!!」


ドンドンドンドンドン!!


ハッ!!避けられた?光粒子は何!?紅?蒼?どっちかしら・・・


【メルーは逃げて行く犯人の光粒子をそこで確認したようなのじゃが・・・】


 え??両方??ってことはジョーカーじゃない!!まさか・・・ザックス施設長が?


パタタタタタタタタタ


「待ちなさい!ウォータースプラッシュ!」


ドドドドドン!


ピクシーの羽の音、逃げていく


(なっ!今顔に命中したのに効いてない?)


「ハッ、イズミさん!!イズミさん!!しっかり~~!!」


「ルー、逃げ・・・メルー・・・つ・・たき・・・あな・・う・・・て・・・」


「イズミさん・・・う・・ううう・・・・」



_______________________________



「・・・とそれが、イズミの最後じゃった・・・」


「・・・そっか・・・メルーにそんな過去があったんだな・・・」


 そんな過去の話を聞くと、さすがにメルーに声をかける言葉が見つからない。健太はいつの間にか力んでいた。何故なのか、自分でもわからなかった。


「とはいえ健太よ、これはメルーから聞いた事をそのまま言っただけじゃ、少し真実と異なる部分もあるやもしれん!

メルーは犯人の顔に傷を負わせる事は出来たが、逃げられたと言っておった。」


「う・・・うぁあああああん!!メルーちゃんかわいそう、かわいそうです~~~!!」


(黒助・・・なぜおまえが泣く・・・)


「うるおい屋で結局誰も来なかったから、ワシは一人で飲み酔っぱらい気づけば自宅じゃった。事件を知ったのは次の日に研究所に行ってからであった。ワシが一緒に行っていればまだ違う結果だったかもしれないのだがと、後悔しておる。」


 シエルも少し情が高まったのか、眉間に皺を寄せている。その時、リサが質問した。


「じいさん?その施設長はどうなったの?」


「うむ、行方不明じゃ!人間&ピクシー間合同会合っていう飲み会に参加すると聞いてはいたのじゃが、その会合には参加していなかった事が明らかになった。それってつまり、元施設長ザックスがイズミを殺したっていう可能性が高くなったという事なのじゃ。」


「行方不明って事は、ピカトーレンとラマにはいないけど、バドームかそれ以外の国にいる可能性が高いってことだろ?」


「うむ、おそらくバドームにいるのではないかとワシは思っておる。」


(バドームか・・・俺が外交官ならいずれ行くこともあるだろ。ジョーカーみたいな顔をしているってのがヒントなんなら、今度探してみよう・・・とはいえ)


「でもさ、じじい。俺の意見なんだけどさ。その施設長が犯人とは思えないんだよね~。」


「ほぅ、何故じゃ?」


「だって古代語施設長が仕事仲間を殺める事がどうも信じられない。何か理由があったとしても、そんな気がする。光粒子がジョーカーだったからってザックス施設長が犯人と決めつけるのは良くないよ。肝心な顔を見てないんだからさ。」


「しかしな健太、ジョーカーなんて突然変異のピクシーは当時ピカトーレンではザックス施設長だけだったのじゃ。、何をどう考えても、犯人は・・・」


 健太はため息をついている。なんでメルーもじじいも勝手にマイナス思考に決めつけるんだ・・・と、感じたのだ。


「じゃあさ、当時ピカトーレンにジョーカーは1人しかいないって言うけど、バドームにはジョーカーは何人いたんだ?」


「・・・帝国にはそりゃ〜沢山いるじゃろう・・・・」


「だったら犯人はバドームのジョーカーだった!!そう思いたいじゃないか!?」


「健太・・・お主・・・」


「バドームには50万人という巨大人口がいるんだろ?紅いピクシーがいればジョーカーだっているはず!!ザックス施設長は犯人として考えられてしまっている為、戻れなくなってしまい、国外逃亡若しくはバドームで生活。俺がさっき聞いた話をまとめるとこうなるんだ!!」


 健太はあっさりと答えてしまう。しかし内心は違うのだ。自分の言ってる事が正しいとは思えないし、単なる推理に過ぎない。しかし、プラス思考で考えを纏め、何か計画を考えればきっと何か良い事が起こる。

自分はロッヂを殺めた、しかしそれは正しい判断だった。だからもう暗い考えは捨てる!


そんな考えでいっぱいであった。


「なんか希望が見えてきたわい。すまんのぅ健太、お主は本当に大きくなっていくわい。」


「そう、希望は持つものだ!俺は王様とか大王とか興味ないけど、バドームの圧力は絶対に何とかするぜ!!」


「うぁわああああああん!!健太君~~~~」


 イルグルは健太の考えに同意したのか?感動したのか?誰もがわからなかったが、健太に抱きつく。


(こいつ・・・まだ泣いてやがったのか・・・)


「黒助!ええ加減にせい!怒りのゲンコツ!!」


ゴン!!


「ヴ・・・ウ・・・・」


よし、静かになった!!


「まぁこの事はメルーには言わないけれども、犯人は俺が探し出す!!」


「そうね、健太、それにはアタシも賛同するわ!?バドームと接触する時は、アタシに必ず声かけなさい。」


 ところどころでリサが口を挟む。そういえば、リサの両親はバドームの連中に殺されたって言ってた事を思い出した。何か感情的になるのであろう。


「ああ、ありがとう、リサ」


 自然と出る言葉、リサはツンとしているが、内心は嬉しいのであろう。健太はリサに対し、初めてありがとうと言ったのだ。

 健太とリサがペアになって戦いに挑む日もそう遠くないのかもしれない。


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