第88話 紅と蒼

 シエルは少しほろ酔いながらも、対面にイルグル、健太、リサと並ばせる様に座らせた後に話し始めた。


「ピクシー族というのは、基本300年という長寿の種族であるのは恐らく知っていよう。その中でメルーは蒼いピクシーじゃ。以前図書館を燃やしたバドーム帝国の第3攻撃隊長のカイト、奴は紅いピクシーじゃ、この蒼と紅のピクシー同志はお互い生まれつき仲が悪くてのぅ。それで分裂してバドームとラマに分かれているわけなんじゃが・・・ジョーカーというピクシーがこの研究所に昔いたのだ。そのピクシーはな、紅と蒼の二つの能力を持つピクシーじゃった。突然変異って奴じゃ、ジョーカーは2つの属性を持つ、ピクシー族ではかなり珍しい奴じゃ。」


「属性を2つ?つまり火の属性を持つ紅いピクシーと、水の属性を持つ蒼いピクシーの両方の能力を持っているってことか・・・そりゃすごいや。」


「健太よ、少し黙って聞くのじゃ!そのピクシーがジョーカーって言うんだ。名前ではない。二つの力を持つピクシーの事をジョーカーと言う。そして、22年前じゃったかのぅ、メルーが研究所で働き始めた頃の話じゃ・・・・」


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「全員受付へ集合してくれ!!」


「はい!」


「は~~い」


「よし!全員集まったな、今日からこのピカトーレン古代語研究所の受付で働いてもらう、蒼いピクシーのメルー君だ。」


「よ・・よろしくお願いします!!メルーっていいます!!」


「ハッハッハ緊張してるな!!俺はここの研究所所長、ザックスだ、君と同じピクシーだが、ジョーカーさ。」


「ジョ・・・ジョーカー・・・すごいですね!」


「ハッハッハ!こればかりは何とも言えない、生まれつきの突然変異だからねぇ。ささ、次紹介だ」


「あ、私はシエル!研究員リーダーです。よろしく!」


「ハッハッハ、メルー君、彼は頭が良い猫族だ、シエルよ、いろいろとサポートしてやってくれ。で、最後の紹介だ」


「私はイズミ、受付をしているわ。あなたと同じ蒼いピクシーで、見ての通り妊娠してるの、私の後継者があなたになるって事なのよ、後30日だけしかいないけど、よろしくね。」


「ハッハッハ!以上のメンバーでこの古代語の研究をしている。古代語は45億年も前の遺跡や文字等を探し、分析するのが我々の仕事だ。この研究がバピラ3カ国に活発を与えてくれる。君も早く古代の研究を理解し、我々と楽しんで仕事をしようじゃないか!!」


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「・・・とまぁ、それがメルーとの出会いじゃった」


「へぇ、知らなかった、猫のじいさんは昔からじいさんじゃなかったのね〜。」


 と、リサの天然に対し苦笑いするしかないシエルであった。

そして少し興味が出て来たのか、元気の無かったイルグルが口を挟む。


「で、その後に何か問題があったんですか?」


(お?黒助の奴がやっと質問をした。少しばかり立ち直ったか?)


 健太はメルーにまだ少し苛立ちがあったが、イルグルが声をかけた事に少し安心した。次は雌猫に恋をしてくれ!とも願う。

又、向かい側のシエルはグビッと酒を飲み干し、再び話し始めた。


「うむ・・・・あの悪夢はワシは一生忘れんわい・・・」



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「なるほど!わかりました!イズミさんありがとう!」


「ウフッ、メルーはなかなか仕事を覚えるのが早くて助かるわ~!?あ、そうだ、今夜さ、二人で飲みにいかない?」


「え?だめですよ!お腹の赤ちゃんに毒ですよ!?」


「ウフフフ、私は水しか飲まないわよ。実は昨日店をやり始めた飲み屋さんがね、すごい評判がいいのよ、うるおい屋って言うんだけど、なかなか美味しいらしいわよ?」



カツカツカツカツ(シエルの歩く音)



「あ、シエル、仕事終わったらメルーとうるおい屋に行ってみようと思うんだけど、一緒にどう?」


「おお、あの昨日開業したあの店か!いいねぇ、行ってみよう!所長は誘わないの?」


「所長は人間とピクシー間での会合出張らしいわよ?だからお誘いしてないの」


「そっかそっかんじゃあ3人で飲むか!!」





【こうしてできたばかりのこの店、うるおい屋で若い頃のワシとメルーは先について2人で飲んでいたのじゃ】


「いや~しかしメルー、君は仕事を覚えるのが早い!!」


「え?そうですか?」


「イズミがかなり関心していたぞ、これならもう私やめても良いかもってな」


「いえいえ、まだわからない事だらけです!でもあたしはイズミさんの教え方がかなり上手で、こんなあたしでもわかる様な教え方でしたので・・・本当にイズミさんには尊敬します!それに、翠毒の解毒剤研究までしているのですから、成功したらもう頭が上がりません!」


しかしなかなかイズミが来ない。


「遅いなぁ、イズミの奴、仕事終わったら直ここに来るらしいが・・・」


「何かあったのでしょうか?あたし様子を見てきます。」


「ああ、気を付けて!」


【メルーはなかなかイズミが来ないのがどうもおかしいと思ったんじゃろう。

メルーはワシに気を使い、一人で研究所に戻ったのじゃ。

そうしたら・・・】


ガンガン

ガンガン

ドドーーーン


え?研究所で鈍い物音??


メルーは研究所入り口を開ける。


開けた瞬間、メルーの目に飛び込んできたのは、火の属性ファイアシャワーを喰らい弱っているイズミだった。




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