第81話 尾行する2人

 左腕の時計は9時55分だ。中央ふれあい広場に表示されてある流回矢るえしは時計で例えると8時の場所。

猫の着ぐるみを何故か身につけている健太は何故か中央ふれあい広場に1人でいた。


(・・・俺って何やってんだ、コソコソと・・・中央ふれあい広場でメルーがハイムを待っているのは分かるんだが、なんで俺は昨日ハイムとうるおい屋で別れた後、また服屋に戻って変装用猫族セットをポイント交換てしまったんだ・・・バカか俺は・・・)


 メルーは中央ふれあい広場の中央噴水の前でハイムを待っているのに対し、健太は広場の隅っこにあるベンチでメルーを見ている・・・明らかにストーカーの様に見える。


そこへ


ドン!


(しまった。モロに誰かにぶつかってしまった。)


「すみませ・・」


「すみませ・・」


お互いが謝ろうと・・・あらららら??


「何やってんだ?黒助!」


「健太君!!それはこっちのセリフですよ!!何変装しているんですか!?猫族になりたいのですか?」


「バッキャローー!!そんなわけねぇだろうが!!黒助だって派手な服に変えて色付き眼鏡なんてかけやがって!!メルーにバレたらどうするんだ!!」


「シーーーーーー!!健太君!!メルーちゃんにバレてしまいますよ!!」


キョロキョロ見渡し、安全を確認した上で小声で話し始める。


[・・・じゃぁお前は一体ここで何してるんだよ!?]


[健太君と同じですよ!!昨日からメルーちゃんデートデートってそればっかりだったから、どんな相手か気になってつい・・・あ!健太君!来たみたいですよ!?]


 どうやらハイムがやって来た。健太が紹介した事によるデートが実現する事となった。


(何故だ?なんで俺はメルーとハイムを尾行しようとしているんだ?やっぱりあの二人に嫉妬しているのか?それとも俺はメルーが好きなのか?いやいや、それは絶対にない。とはいえ、この先どこに行くのかが気になるな。)


[ああ!!なんていう事でしょう!!メルーちゃんが積極的にあの男のピクシーに腕を組んでますよ!!あああ!メルーちゃんの胸があの男の肘に!!ムムムムムなんて大胆な!!誰なんだあの男は!!]


[な~~にが大胆だよ、単に腕を組んでるだけじゃねーか、腕を組まれたら胸くらい当たるわ!さあ、奴らが移動し始めた。追うぞ]


[はい!!]





メルーとハイムはデート場所を西地区と決めた様だ。そのまま西地区の街を歩き、きよめ屋というお店に入った。


「きよめ屋?黒助、何の店だ?」


「水の専門屋ですね、ピクシーは水が好きですので、ピクシー族にはかなり人気のあるお店ですよ。」


(ほほう、喫茶店みたいなものが。)


「わかった、じゃあ入るぞ!」


「はい!!」


 ピクシーに人気のお店だけあって、客も店員もピクシーしかいない。健太達だけ、別種族だ。


[健太君、これは目立ちますよ、いずれバレちゃいます!一旦出ませんか?]


[バカをいうな!奴らをこのままニャンニャンイチャイチャさせていいと思っているのか?出たければ一人で出ろ!]


[わかりました!!僕は出てますから・・・・]


[ああ!!あんのスケベハイムの野郎!!一つのグラスにストローが二つだと!!]


「えええ!!なんですって!!」


「このバカ!!声を出すな!しかも大きな声で!!」


 健太は黒助の頭を抱え込み、地べたへとつけた。そして健太も地べたへと這いつくばり隠れた。


「なになに?ねぇハイム様!?何か聞こえた?」


メルーはキョロキョロしながらハイムに聞いている。健太と黒助は隠れる事で精一杯だ。


「ん~~~、聞こえてくるのは、メルーちゃんのキュートな声だけかな!?」


「んもぉ~~~、やだ~~~ハイム様ったら~~♪」


(う・・ウヌヌヌヌヌヌヌ、ハイムのヤローー!!ハッ!!いかんいかん、なんで俺はハイムに怒っているんだ?別にアイツらが何処で何をしようが俺には関係ないじゃないか!!とはいえ・・・あいつらの動向が気にはなる。)


[ねぇ健太君、いつまでここで伏せているつもりですか?それに今の発言、僕はもうあの男を許す事は出来ません!!奴を仕留めます!!]


 (このバカは何を言い出すんだ!!いや、待てよ?確かに黒助は強いが、ハイムはサポート系戦士兼国王補佐官だ、そんな簡単には倒せない。つまり、黒助がハイムを弱らせた後、俺が出てきてハイムをやっつける!これで俺が勝つ!

・・・って待てい!!勝ったからって何だって言うんだ!!メルーにバレて怒られるだけじゃないか!!よし、俺はずっと隠れていればいいんだ!)


[よし!黒助、あの男は許すまじ行為をしやがったんだ!!奴を仕留める事を許可する!!]


[了解!!]


 作戦は決まった!!健太はイルグルに全てを託した。自分は何もしない様だ。


「でやああああ・・・・あ??」


(・・・ん?黒助、どうした?)


「いません!!もうきよめ屋から外に出ています。」


「なにぃいいいい!!黒助!!俺は奴らを追う、お前はここで壊したテーブルと俺が飲んだ物をサインして、黒助のポイントで支払い後、俺と合流だ!」


 そう言い残し、健太はイルグルを置いてハイムとメルーの行方を追った。


「ひぃいいいい!!酷い!!」



 

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