第78話 寛げる居場所

「ごめんな、父ちゃんを守ってあげれなくて。」


「・・・いい・・・」


「何処か痛むところはあるか?」


「・・・ない・・・」


「キミ、名前は?」


「・・・ダイス・・・」


 ロッヂによる暴力で傷だらけの子供猫族は健太にダイスと名乗った。


「ダイス、この海の向こう側には大きな大陸があって、い〜っぱい猫族がいるんだ。

俺が今から乗り物を手配するからさ、待っててな!」


「・・・うん・・・」


 傷を見るだけで痛々しい。出来ればグリフォンに乗せてダイスだけでも連れて行こうと健太は考えたが、ダイスの希望で皆んなと船が到着次第移動する事となった。


 既にフクはグリフォンに乗っていた。ハイムは羽があるし、どうやら健太待ちの様だ。


「んじゃ皆んな、向こう側で待ってるからね〜!」


「キノシタ様、このお礼はどうすればよいやら・・・」


 お礼なんて要らないって言いたかった健太だが、500人の猫を助けたと思うと大きな仕事を終えた間が欲をつい考えてしまい、あえてコクリと頷くだけにした。


 フクの声かけにより、グリフォンは空高く飛び上がる。そして羽を広げ、島を離れていった。





 その夜、健太はラマ国に戻り、メルー達にうるおい屋に来る様に言われた様子。


「え~~~~!!任務失敗しちゃったの~~~??」


「シーーーー!!バカ!!メルー!!声がでかいよ!!恥ずかしいじゃないか!!」


 うるおい屋で研究所のメンバーで飲み会を行っている、シエルはまだ来ていない様だが、この時間が今の健太にとって一番落ち着く時間であり、一番幸せな時間なのかもしれない。そう思う様になってきた。


「でも健太君、なんかどんどん大きな存在になっちゃうよねーー!?」


 と、まるで身内の兄弟が大きな仕事に成功した事を嬉しく思っている様な表情でイルグルは健太を見ていた。


「自分はそうは思ってないさ、でも本当にそうなったら黒助はお部屋掃除係として雇ってあげるからな!!」


「キャハハハハハハ」

「アハハハハハハーー」

「クス」


「エーーー!!嫌ですよ~~~!!」


と、イルグル以外は笑っていた。突然ラマに来てしまったリサもクスっと笑っている。


「お、リサ、少しは慣れたか?他国に」


「そんな早く慣れないわよ〜、環境がゴロっと変わったし、やったこともない仕事してるんだから!」


 研究所でお手伝いをし始めたリサであったが、順調なのか気になるところだ。


「まぁ、人間の女にしては少しは役に立ってるわよ〜」


と、お酒を飲み干してメルーは言う。


「少しは?ってどう言う意味よ!!」


(おいおい、声がでかいよ、あっそうだ!メルーにあれ言わなきゃ!)


「あ、そうそうメルーさ、俺苦労したんだぜ!」


「へ?何が?」


「あれだよ!!ハイム様」


「嘘・・・もしかして・・・」


「そう!!紹介しておいたからね!」


「うわぁああああああいい!!健太ありがとう!!健太大好き~~~~!!」


 健太の向かい側にいたメルーは、嬉しさのあまり健太の肩に飛びついた。


「だ~~か~~らでかい声で叫ぶなっつ~~~の!!」


 肩にしがみついたメルーは、そのまま顔をスリスリしている。酔っているとはいえ、何やってんだかと健太は苦笑い。

そんな光景を見たリサはすぐ様行動に出た。


「ちょっと、おチビちゃん!何してるの!?健太から離れなさいよ!」


 健太の隣に座っていたリサは、健太から引き離そうとしている。

そして意外にもイルグルまでが声をかけてきた。


「健太君!メルーちゃんから離れなさい!?」


「え?俺?俺が?」


 メルーが飛びついて来て何故か健太が怒られているのは、健太にも意外な事なので、何度も自分を指で挿し、俺?と言っていた。


「やれやれ、やけに騒がしいのぅ」


「お、やっと来たなじじい」


「誰がじじいじゃ!!まったく!!それにしても健太よ、よくぞ山猫族の謎を暴いてくれた。この事はうちの国だけでなく、ピカトーレンにも影響する話じゃからのぅ、評価は高いぞ。」


「評価とか・・・嬉しいのは嬉しいけど、ロッヂの子供のダイスの今後が気になるよ」


「なんじゃ、聞いてなかったのか?ダイスは上層部で兵隊にするって聞いたぞよ?」


「へ?」


 ラマ国に戻って直ぐに解散した為、健太は全く知らなかった様だ。

さっきまでメルーから離れろと少し怒っていたイルグルまで口を挟む。


「あら?健太君知らないんですか?なんでも、特別部隊長のフク様が国王様にお願いし、自分の部隊に所属させるとかって聞いたことありますよ~?」


「ほへ?」


(そうなのか?じじいや黒助が知っている事を俺が知らないとは・・・)


「まぁまぁもういいじゃないか、俺さ、今日くらいは何もかも忘れてさ、パーーーーッとしたいのよ!なぁじじい、俺もさ、お酒飲んでもいいか?」


「やれやれ、仕方のない奴じゃのぅ!ニャッフォッフォ!よし!一杯だけじゃぞ!!」


健太はその一杯で・・・気がつけば次の日の朝で、黒助の家だった。



コンコンコン


「入れ!!」


「失礼します、私、国王補佐官ハイム、並びに国王外交官木下健太、並びにラマ国上層部特別部隊長フク入ります。」


「うむ、3人共、南の島、ロッヂの件、ご苦労であった。これより、3人にこの功績について結果を伝える。」


「ハハ!!」「はい!」「へ〜い。」


「ロッヂの件は、任務失敗となるが、闇に呑まれた相手という重大な問題もあっての事により、厳罰30日の謹慎処分を・・・・変更し、7日の謹慎処分とする。」


「え?」「へ?」「い?」


第9章ピクシーの春へつづく

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