第76話 抜け殻

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 あら?白いもやなんてあったかなぁ〜・・・ってここは?


 健太は、辺りを見渡す。見慣れた場所だから直ぐにわかった。しかし何処か懐かしい・・・


 こ、ここは・・・俺の家?そうだ、家だ!しかしどうやって帰ってきたんだ?


「おや、健太!あんた帰ってたのかい?」


え?か、か〜ちゃんだ・・・


「まったくあんたって子は4年以上家に帰らないで、何をしていたんだか・・・」


な、何って、俺は一つのとある国の外交官に・・・


「警察だ!突然失礼する。木下健太だな!貴様を逮捕する。」


な、なんだなんだ?


「健太、あんた人を・・・人を殺したんだってねぇ!?・・・かーさんはそんな子に育てたつもりはないのに・・・」


え?殺した?いや、あれは違う、違うんだ!


「あ!おまわりさん!コイツです!俺を光の魔法で殺したのは!」


ロ、ロッヂ!なんでここに・・・う、うわぁぁぁああああ!


「あ!君!待ちなさい!」

「ううう、健太!かーさん、悲しいよ!」

「あー痛い痛い、お前にやられた魔法で痛い痛い!」


や・・やめろ・・・やめてくれ・・・


「健太君?そんな人だったの?見損なったわ!」


マ・・・マキちゃんまで・・・


「バカだねぇ。」

「バカよバカ。」

「バカだったんですか!」

「ニャハハ、バカよのぅ!」


やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!


やがて白い靄は消え去る


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「やめてくれ〜〜!!」


ガバ!!


 健太は気付けば横にボロボロの布団の上で横になっていた。そう、悪い夢を見てしまったのだ。


「ハァッハァッハァッハァッ」


 全身汗でダクダクになっていた。そんな健太を看病していたのか、集落の山猫族の爺さんは少し心配そうな顔をしている。


「キノシタ様、大丈夫ですか?」


 健太は何も言えない。大丈夫なのか自分でもよくわからなかったのだ。


「今フク様とハイム様を呼んできます。横になってて下さい。」


 爺さんはそう言うと、外へと出て行った。健太の気分は誰にも会いたくない、誰とも話したくない気分になっていた。その気持ちが強ければ強い程、無意識に逃げ出したくなるものだ。

いつの間にか健太は縄文式の家から出て、小川の方面へフラフラと歩き出した。





「あ!フク隊長、健太がいないぞ!」


「なに!一体何処へ!」


 フクとハイムが駆けつけた時には、健太の姿がなかった。


「フク様、ハイム様、私にお任せくだされ、キノシタ様はかなりうなされておりました。先ず行く場所は決まっております。」


 爺さんはフクとハイムを連れて、健太が移動した場所へと進んだ。


 ロッヂとの戦いが終わり既に1日が過ぎていた。丸1日寝込み、うなされていた健太は水を求める筈と、小川へと移動する。


 3人は、意外と早く健太を見つけることが出来た。健太は既に水を飲んだ後なのか、木をすがり、ボーっとしていた。目にはクマがあり、とても強敵ロッヂを倒したとは思えない姿であった。


「健太・・・」


フクは健太を見て悲しそうに見ている。


ハイムは健太の頭に座り込み、顔を覗き込んだ。


「健太、急にどうしちゃったんだよ?光魔法の副作用でもあったのか?」


「・・・ごめん・・・」


 その一言のみだった。近くにある滝壷の音だけが大きな音を立て、無駄に時間だけが過ぎていく。


「健太、ラマ国に帰ろうよ?バッド様に色々伝えないといけないしさ!」


 少しだけハイムが強い口調で言った。少しだけイラっとしているのであろう。


「・・・・」


 しかし健太は遠い空をジッと見ているだけであった。

 そして遂に痺れを切らしたフクがいた。


「健太!いい加減にしろ!!」


ドン!!


 フクは木に縋り込み、ボーっとしている健太に喝を入れる為か、健太に蹴りをお見舞いした。


ズザザザザザザーーーバキバキバキ


 健太は吹っ飛び、そのまま茂みの中まで入り込んだ。


「痛い・・・」


「健太、痛いか!それはそうだ!俺は蹴ったんだからな、しかしそのまま蹴り続けるともっと痛い思いをするだろうし、下手したら死ぬかもしれない!このまま続けていいのか?」


「し・・ぬ?・・・俺が?・・」


「何に悩んでいるのか知らないが、お前の根性を叩き直してやる!!覚悟しろ!!」




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