第75話 殺めた代償

 健太の頭の中で過去の想いが甦える。


【俺の塾生の友達である修一は、学校は違ったが仲の良い塾仲間、しかしいつもアザをつけていた。周りの皆んなは何一つ意識なく、転んで怪我をしたと思っている。しかし俺は身内の誰かに傷をつけられていると、そう感じていた。

 塾講師も見て見ぬふり。今の俺なら修一、お前を助けてやれる、そんな気がするんだ。お前の目の前で自分がダークルカンに連れ去られてしまったが、待ってろよ、必ず助けに行ってやるからな!】


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「闇の力を身に着けた者は、死後必ず地獄におちるんだって。」


「ん?闇の力?でもさー俺もリサも魔力なんてないじゃん。」


「そうだけど、闇魔法って聞くだけで怖いわよね~~」


「そうか?俺は平気だ、安心せい、俺が守ってやるから」


「はあ?(でもドキン!)」


「ん?だから俺が退治してやるから安心しろって意味だよ!」


「なんだ、そういう意味か・・・だよね~だって健太だもんね・・・変な意味で考えちゃった・・・」


「ん?なんだって??」


「ん~~ん?何でもない何でもない!」


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「んた?」


「けんた?」


「おい!健太!」


 かなり長い間妄想に明け暮れていた。ロッヂとの戦いで、健太の頭の中で過去の出来事を思い出してしまった。


ボソッと健太は・・・


「ロッヂの奴め・・・こんな小さな子供を残して闇に手をつけるなんて・・・バカ野郎・・」


 ロッヂは闇に包まれ、もがき苦しんでいる。以前リサと話をしていたこれが地獄を見ている姿なのかもしれない。

 健太は詳しい事は判らないが、ダークルカンの闇に関わるのは充分に気をつけなければならないと実感した。


「人間なのに魔力を・・・大したもんだ」


 絶賛しているハイムだが、素直に喜ぶ事は出来なかった。健太はラマ国外交官とはいえ、軍人でもない。平和主義の日本人なのだから。

 ハイムやフクは、敵が倒れたり死んだりしても何とも思わない。しかしバピラではこれが普通なのである。


 ロッヂはもう動く気配がない。誰がどう見ても、健太の光魔法でロッヂを殺めたと言って良いであろう。


 バッド王は言っていたのは、


''山猫族ロッヂを接触をし、仲間に加え、バドーム帝国を迎え撃つ''


 この命令通りにならなかった。つまり、作戦失敗であった。


 健太は震えていた。武者震いではない、自分が恐ろしいのだ。人間では無い種族を殺めた事による恐怖を感じていた。


「う・・・うぁぁぁああああああ!!」


 涙を流し、頭を抱え、ひざまずき叫んだ。


「お、おい!」


「健太!しっかり!しっかりしろ!」



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