第73話 ロッヂの過去
健太達は再びロッヂがいるとされる集落へと戻った。見る限り、ここも縄文時代の様な住処が数件だった。
つい先程、彼らの闘技場で30人をフクが懲らしめた為、人の気配がしない。本当にロッヂはいるのだろうか。
気配を全く感じなかったが、フクだけは何やら警戒した。明らかに居ると言った顔をしていた。同じ種族だから本能で感じたのかもしれない。
そのフクの考えは的中した。集落の茂みに1人隠れている。
「何もしない、出ておいで。」
フクは優しい口調で声をかけた。恐る恐るだが、茂みより出てきた。
「あっ、お前は・・・」
健太はつい声が漏れる。出てきたのは、滝で出会い、転がってきた岩から逃げていた山猫族の子供だった。よく見るとあちこちと怪我をしている。擦り傷ではない、明らかに殴られた傷や引っ掻き傷であった。
フクはこの子供に話しかけた。
「ロッヂってどこにいるのかな??」
子供は弱々しい声で答える。
「・・・父ちゃん・・今・・起きたところ・・だよ?」
(父ちゃんだと?あの子の父親がロッヂだったのか!!)
子供は怯えているのか、震えながら指を挿す。その先にある家にロッヂがいるのであろう。
皆んな、ロッヂの家に向かった。家の入口に今までで一番大きく、見た事ないくらい大きな猫が立っている。気配を感じなかったが、何時から立っていたのであろうか。
フクは訪ねる
「・・・私はラマ国・・・」
「よい!!わかっておる。遂に来たか。」
何かを察したのか、意外な言葉だった。更に、
「さあ、俺はどっちと戦えばいいんだ?猫か?人間か?ピクシーか?・・・ん?人間?人間だと~~~~???」
ロッヂが少し興奮し始めた。
「裏切者の人間が何故ここにいるんだ!!俺たち猫族を追放した人間が!!」
すごい威圧だ!しかし今の発言に対し、どうやら健太がターゲットになりそうだ。
「俺はラマ国外交官の健太と言う。ロッヂよ、簡単に言うぞ、迎えに来た。ラマ国に帰るぞ、さっさと準備しろ。」
「なんだと!俺達を勝手に追放した人間が何故外交官なんぞ重役を・・・」
「追放ではなく、ラマ王の独立だ!それを知らないまま騙されてこの島に来てしまったお前達を助けに来た。」
「助けに来ただぁ?冗談じゃない!」
ロッヂの怒りは健太に向いている。その目はやはり光加減は関係なく、眼孔は細いままであった。
「俺はピカトーレンの貧民街で生まれ育った。親も周りも貧しい環境で育ったんだ。
早くに両親は病死した、裕福であれば、裕福でさえあればとウェルザ王を恨んだ。」
ロッヂは肩に刀を担ぎ、淡々と昔話を始めた。人間を毛嫌いしているのはわかったが、ウェルザ王はウルフであるがウルフにも憎しみがありそうだ。
ロッヂの話はまだ続く。
「ある日、俺は平民と富豪達の大型食料品店に侵入し、略奪を試みた。
しかし、失敗し牢獄に監禁された。」
「な、なあロッヂ?今のピカトーレンは、貧民とか平民とか富豪とかさ、もうそんなランク付けみたいな国じゃないからさ、だから・・・」
「黙れ!俺は騙されんぞ!」
ここまで聞き分けのつかないロッヂには何を言っても今は無駄かもしれない。
健太は魔力行使を覚悟した。
「監禁されてる時、1人のピクシーが訪ねて来た。脱獄に協力すると言う事だった。
"ここを出してやる。但し良い話があるから協力しろ''
俺は条件を呑んで脱獄した。脱獄した後、ピクシー族に500人限定で長寿の実を採取しに船に乗る様指示されたのだ。」
健太は直ぐに頭によぎる。
「まさか、そのピクシーは
「・・・いずれにせよ、エルフが操縦する船に乗った事が地獄の始まりだったのだ、長寿の実なんて存在しない、身体を無理して巨大化させる危険な実、気付いた時にはピクシーもエルフも、そして船さえ無くなっていたからな・・・確かに貴様の言った通り、ピクシーの頬に傷はあった。」
ロッヂは過去に起きた経緯を話してくれた。
その中にボ=ギールやカイトの仕業だと思わせる人物も判った。全てを聞いた健太はバドーム帝国に対し、苛立ちを感じるのだった。
「ロッヂ・・・俺の名前は木下健太。俺がバドームを、俺がバドーム帝国を全てぶっ潰してやる!」
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