第72話 1対30

 フクは大した自信を持っている。1人で山猫族30人を相手にしようとしている。


フクの実力はどれほどなのか。


「・・・貴様のその余裕がどこから来るのか知らんが、貴様らが負けたら、この島まで来た乗り物をもらい受けるぞ!」


「それは保証しよう。しかし、お前たちにはそれは出来ない。なんせこのラマ国上層部特別部隊長で私にやられてしまうんだからなぁ」


「ククク・・上層部の者か・・・これは都合が良いわ、我らはその上層部を乗っ取ろうと研究する為にこの島へやってきたエリート。貴様ごとき・・敵ではないわーー!!」


 門番はフクへと襲い掛かる。しかしフクはヒョイと交わし、隠し持っていた棒で首を叩いた。


「ムガ・・・」

一瞬だった、あれ程余裕の表情をしていた門番が僅かな時間、しかも一撃で倒されたのだ。


 残りの猫達は呆然とした。そして、


「次は誰だ?この私に倒されるのは?」


 呆然としたのは猫達だけではなかった。健太も唖然とし、暫く空いた口が塞がらなかったのだ。


「こ・・これは・・・魔剣士!!猫族は基本土属性魔法を主とした魔法使いが多い中、剣術を極め、魔剣士として生きていく者が少なからずいるとマーズで聞いた事がある!フクがそうだったのか・・・」


驚く健太に対し、ハイムが口を挟んだ。


「ハハハ、健太、フク隊長はこんなもんじゃないよ?剣術ならおそらくラマ一の剣術使いさ。しかもまだ力を抑えている。」


 健太には信じられなかった。巨大化する実を食べて迷惑をかけ、自分の魔法で気を失ったあのフクが、今はたくましく見える。


「ククク、一人倒したからって、なに余裕な表情を浮かべてるんだあの部隊長とやらは・・・よし!!お前ら!いくぞ!!全員で行けばラマ国に戻れる!!戻って戦争じゃぁああ!!」


「うぉおおおおおおおお!!」


「愚かな・・・【土に纏わる我が同志よ、力を貸してくれたまえ】アースクェイク!!」


ドドドドドドドドドド!!!


猫族の周りだけ大地震が起こっている。


「ニャアアア!!」


「フギャーー!!」


ドドン!!


地盤が緩み次々と地面へと落ちていった。


「す・・・すげーーーフク!お前、すごいんだな!!」


「・・・・フゥ・・・先輩にはフクさんと言え!!」


一瞬であの人数を再起不能にするんだから、大したもんだ。


「よし、あとはさっさと頭領のロッヂとやらをやっちまおう。行こうぜ、ハイム、フク。」


健太達は闘技場を後にして、集落へと戻った。





「この大バカタレが!」


ガッ!


「ブワーーー!!」


 ここ、バドーム帝国では1人のエルフが殴られている。そう、ボ=ギールである。


「貴様が計画していたラマ国老朽化計画だが、早くも失敗しそうだ、この責任はどう考えているつもりだ!」


「ももも、申し訳ございませんアル=バード大臣、私には一体何のことやら・・・」


バキ!!


「グッ!ゲホッゲホッゲホッ!」


「ボ=ギールよ、貴様が提案したラマ国老朽化計画は離小島に剣士系猫族を誘き寄せ、野生化させるといった作戦ではなかったのか?」


「は、はい!その計画ならば8年前に成功させておりますが?」


偵察奴隷ゴブリンの話ではラマ王が兵を向かわせた様だ。大丈夫なのか?」


「なんですと!あの島に兵を?」


 このアル=バードと言われるこの人物もどうやらエルフの様だ、大臣と呼ばれているという事は、バドーム帝国を執り仕切る人物であろう。

 

アル=バード大臣はボ=ギールに蹴りを入れる。


ドッ!!


「ガァアアアァァァァ!」


「私は大丈夫なのか?と聞いたのだ。」


「ゼェッゼェッ、だ・・大丈夫でございます、ゲボッゲボッ。」


「そうか、それなら良いのだ、但し、もし老朽化計画が失敗に終わった場合、ボ=ギールよ、貴様は国から追放だ!」


「ハァッハァッ・・・わ、わかりました。(つ、追放だと!冗談じゃない!追放はつまり死を意味するではないか!)」


 謎に包まれるバドーム帝国だが、少しだけまつりごとに動きがあった。


 基本紅く、紅と蒼い粒子を放つ紅ピクシー第3部隊隊長のカイト


 気が短く血の気の多いエルフ、第4部隊隊長のボ=ギール


そしてバドーム帝国を執り仕切るエルフの大臣アル=バード


バドーム帝国は一体どんな国なのであろうか。又、バドーム帝国国王や他の部隊長、国民は一体どの様な人物達なのであろうか。



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