第65話 素早い物影

 川辺に近づくと、森にも日の光が入るくらい明るくなってきた。健太は人差し指の光を中断し、川へと急いだ。そして、川へ出ると、大きくも小さくもない川が流れている。かなり澄んだ水の様だ。


 ハイムの言葉を思い出し、上流へと歩く為に進路を変えた。川沿いとはいえ歩きにくく、ほぼ浅い川を歩いて上流へと進んだ。


 しばらくすると、何やらまた音がする。これも水の音だ。おそらく滝があるのだろう。健太はおよそ1時間は歩いた。どんな滝かわからないが、滝のふもとで休憩をしようと思いながら、健太は音の聞こえる場所へと進んでいく。休憩しようと歩く時は自然と足が速くなる。いつの間にか小走りしていた。


 そして滝に到着した時、思わず声がでた。


「うわ!!すっげぇええ!!きれ~~~な滝だ~~~~」


 高さ50メートル以上はあるだろうか?その高さから一気に下までドドドンと水が落ちている。その光景は美しく、旅行の観光スポットにでもできるくらいの美しさだった。


ガサガサ


!!!


 何かいる。いや、誰かがいるようだ。

この滝付近で住んでいる人はいそうにないが、何やら気配がした。


 俺にはトラウマがある。以前この世界に来た時、ドズラの顔をみて気を失ったことがある。今回はそんな失敗はしたくはない。


 どこだ、どこかで俺を見て隠れているのが分かる。あっそうだ!!ハイムもフクもいないんだから、せめて正当防衛として、レーザービームを練習がてら披露しようじゃないか!


 健太は360度見渡しながら、魔力を集中させた【光を灯す我が属性よ、力を貸したまえ】どこだ、どこにいる。周りを集中させる。!!僅かな気配の乱れを捕えた。


「そこだ!!レーザービーム!!」


 健太の魔法は発動した。発動した魔法は滝横にある一本木を見事に貫通した。木は見事に倒れた。


ドドーーーーーーン!!


 大きな木が倒れると同時に倒れる木の反対方向に逃げて行く物影が見えた。

その影は素早く滝壷へと消えていった。


(!!なんだ?なにが起こった??

今出てきたのは猫だ、山猫族だきっと。でも、おそらくまだ子供。この辺で遊んでいたのか?)


 恐らく今ザザっと現れて、滝に向かって飛び込んだ。そしてそのまま走り去った。おそらくこの滝の向こう側は空洞になっている。健太はそう感じたのか、滝に近づき滝の奥をのぞき込んでみた。確かに洞窟がある。どこに繋がっているのかはわからない。


 しかし、山猫族とはいえ、子供が入り込むくらいだから、自分が行っても問題はないと判断し、健太は滝の裏側にある洞窟へと足を踏み入れた。


 ハイムもフクも一体何処に行ってしまったのか、支給された昼ご飯を食べながら再び健太は指先ライトを発動し、移動していた。


モグモグ


又、木を一瞬で自分のレーザービーム魔法で倒す事が出来た事に対し、奇跡とはいえ達成感を感じていた。


モグモグ


 それにしても山猫族は大きい猫であり、素早い猫で凶暴な猫って事だろうか・・・あの素早い行動をみてしまうと・・・


モグモグ


あ!!しまった!!さっきから考えながらお昼してたらフクのまで食べてしまった!!




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