第64話 分担捜索

 フクは浅瀬にグリフォンを下ろす指示をし、健太達は浅瀬に降りた。


 グリフォンは再び空高く飛び北の空へ消えていった。とはいえフクはバッド王に呼び寄せの笛をもらっているから、帰る時もグリフォンで帰れそうだ。


 ハイムは自分の羽でここまで飛んできたが、疲れて疲れていないのだろうか?少し疑問に思う健太だが、ハイムは疲れた顔を全くせず、健太の目の前を飛び、話しかけてきた。


「さて、山猫達を探そう。空から見たら小さな島に見えたが、いざ降りてみるとかなり大きな島だ。健太、どう探す?」


「山猫って言うくらいだから、山に住んでるんでしょ。山道を探し、山を登る」


2人ともその意見に反対はなく、健太達は浅瀬から浜辺に、浜辺からとりあえず森に入った。





 まだ昼前だと言うのに、森の中は暗い。太陽があまり届いてないようだ。それくらい周りの木が高く成長しており、光が届かないのだ。ハイムが放つ蒼い光、光粒子のおかげで周りだけは明るい。そしてハイムが言いだす。


「こんなに周りが暗いと迷子になる。ちょっと真上に上がって山猫が住んでいそうな山を探すね」


「あ・・・おい・・」


そう言うと、ハイムは真上へ上がって行き、姿が見えなくなった。


「人間は不便だよねー、私ら猫族は夜でも普通に見えるんだけどね。」


(そんな事言っても、ピカトーレンもラマ国も国民は夜になると寝てるじゃねーか、不便とはいえ、身体を休ませる時間だから、特に不便とは思ってはないぞ。)


「健太、私は暗くても見えるからちょっと先に行ってみるね」


「いやいや、俺を1人にしないでくれよ、真っ暗で何も見えなくなる。」


「いや、実はな、トイレだ。」


 トイレなら流石にそれならそれ以上何も言えなかった。渋々健太は待つ事にした。


「あ、待てよ!?光だ、俺には光属性魔法があるじゃないか!」


【健太よ、光属性魔法はまだあんまり公開してはならぬぞ。人間が魔法だなんて噂が広まると人間の印象がまた悪くなる。】


(だめだ、シエルじいにそう言われたんだっけ?)


 結局健太はその場で待つ事にした。目を開けても閉じても真っ暗、ダークルカンに捕われた苦い思い出がぎる。しかし、空を見上げると光が僅かに見える。この森の木もかなり大きい。かなり昔からあるんだろう。流石に45億年前からではないだろうが・・・


 遅い!あいつら何処まで行ったんだ!まさか、あいつらもこの場所が分からなくなってしまったんじゃないだろうな!しかしもう我慢できない。こうなったら光属性魔法で・・・そう思っていた時、ハイムが降りて来た。


「ごめんごめん、お待たせ〜」


「ハイム!遅いよ!で?どうだった?」


「うん、あら?フク隊長は?」


「トイレらしい。ぜんっぜん帰ってこない。」


「・・・だろうな、きっと迷子になってる。」


「はぁ?隊長が迷子?」


 (バッド元連隊長現国王は優柔不断、フク特殊部隊長は方向音痴か?どうなってるんだ、猫族の上層部は。)


「まっ、いいや。死ぬことはないだろう。健太、左500メートル先に川がある。先ずは川に出よう。そして川に出たら登っていくんだ。川沿いに狼煙のろしが、見えた。何かあるはずだよ。」


「狼煙か、山猫がいるのかもしれないな、わかったよハイム、俺一人で行くから、ハイムはフクを見つけてくれ!」


「うん、わかった!あら?でも健太、暗いのに歩ける?」


「大丈夫、なんとかするよ。川沿いの狼煙付近で再会しよう。」


「了解、フク隊長見つけたら迎うねー。」


健太はそのまま進路を左に変え、暗い中歩き始めた。


一方、ハイムは右側に進路を変え、フクを探す、そしてふと思ったのが・・・


「あら?私ってもしかして健太に命令されてる?しかも呼び捨てじゃなかった?私達、先輩なのに。」



 健太はほんの少し歩いた後、右手人差し指のみ魔力を集中させ、光属性魔法を放つ。人差し指の明かりで森を進む。


「フッフッフッ名付けて指先ライト、俺ぐらいになるとこれくらいチョチョイのチョイだ。」


しばらく歩いていると、何やら音が聞こえる・・・そう・・・水の音だ。ハイムの言った通り、川が近くにあるんだ。


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