第59話 短き滞在

 健太が左腕につけている腕時計が20時になった頃、ラマ国に戻ろうと準備をしていた。

大した情報を聞き入れたわけではないが、山猫族は新種族でも何でもない猫族であり、頭領がロッヂということ迄の情報だけを元に、明日南西にあると言われる島へと向かう。

健太の予想では四国ではないかと思っている様だが実際はどうなのだろうか・・・


 シュール入口に見送る側と、出発側と分かれている。


「健太よ、大変だろうが頑張るのだ!時には辛い事もあるだろうが、嬉しい事もあるはずだ、どうしようもなく辛い場合はシュールに帰って来い、ここはお前の居場所でもあるからの!」


と、有難い事を言う施設長シュケル


「何度も言いますが、バカばかりしないでくださいよ!?」


とウルフのラウル


「お前と俺は一心同体、困った時は口笛だぞ!!飛んで助けに行くぞ!」


と、ウルフのリョウ


「健太、無事戻って来たら、さっかーをもう一度勝負しましょう。ノーラと練習してたら、つい面白くなって。」


「んだんだ〜!」


と、マルスとノーラ


 各それぞれの一言の励ましをもらい、健太から特に何も言い返さず、照れ臭そうにシュールをゆっくりとした足取りで去った。


見送りが終わり、シュケルは自室へと入る。

(やれやれ、健太帰国サプライズは嬉しいもんじゃのう、次に会う時はうんとご馳走を・・・ん?)


 シュケルはテーブルに1枚の手紙に気づいた。誰からかな?と、思ったが、字をみると直ぐにわかった。

「え〜〜っと、リサから手紙か、フムフム、フムフム、フムフ・・・・



な・・・なんじゃとぉおおおおおおおおお!」





「健太よ、お主は少し変わったのう。」


「ん?そうか?」


 真っ暗な夜道、シエルの杖から光る魔力と、健太が苦労して最近使える様になった両足に光る魔力の明かりを頼りに、ラマ国へ徒歩で帰っている途中、シエルは健太を見ながら語った。


「ラマに来た頃はこっそりと悪戯をし、イルグルをいじめ、自分さえ良ければ、とりあえず楽しければ、みたいな感じに見えたがのう。」


「し、失礼だな〜、俺はいつも温厚だ!」


 健太は褒められたのか説教されたのか判らない事を言われ、少し動揺する。

やがて両足の光る魔力は消えてしまった。


「あああ!やい!このクソジジイ、なんて事しやがるんだ!折角魔力コントロールしていたのに!」


「ニャ・・・クソジジイじゃと!なんて口の悪い奴じゃ!クソまでつけんで良いじゃろうに!」


「うるせぇ!人の苦労を一瞬で消しやがって、だいたいなぁ、シエルじじいもシュケルじじいも・・・」


 健太は頭に血が上っていたその時であった。

シエルは風の音を聞いた。


「む!ハァ!!」


カツッ


一瞬の出来事であった。矢が飛んできたのだ、しかし矢はシエルにより弾かれた。


「え?何だ、今の」


健太は辺りをキョロキョロ警戒する。


「いや、矢は威嚇じゃろう、放っておいても当たってなかったわい。」


やがて矢が飛んできた方角より人影が見える。その人物とは・・・


「さすがね猫のおじいちゃん。」


「リ、リサ?何でここに?」


「健太、あたしね、さっき決めたの。あたしもラマに行く事にしたわよ。」


「な・・・なんだとぉぉぉおおおおお!」

「ニャ・・ニャンじゃとぉぉおおおおお!」



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