第58話 目標

 健太はラマに行ってから古代語研究所として働いている事はまだしも、他国の外交官になった事、そして、山猫族に会いに行く事をリサに盗み聞きされてしまった。

 恐らく、リサは健太の行動は許さないであろう。


「いい?健太!?ウルフには素早い足がある。リザードマンには丈夫な身体がある。人間は何もないのよ!とにかく鍛えないと人間は生きていけない!特に健太はレンジャーの能力も低いんだから、もう危険な行動はしないでよ!」


 (昔からそうだった、リサはいつも俺の行動に対し批判ばかりしていた。マーズでレンジャーの修行中に怪我をしてしまうと、治療してくれるのはリサだった。

マーズでいじめられて庇ってくれたのも、リサだった。)


「なぁ、リサ、確かにレンジャー修行は本来なら10年する所だが、俺は4年しかしてない。今のままでバドームや山猫族に接触するのは危険な行動だろう。

でも俺はレンジャーに興味はない。それに俺は別の能力を修行中だ。」


「別の能力?もしかして逃げ足の事?」


「んなもん修行なんかしねーよ、俺が今修行してるのは、光の魔・・・」


「健太!!」


 鋭い声で急にシエルに呼ばれた。"それ以上は言うな"明らかにそう述べている。


「フン!言いたい事は何となくわかるわよ!どうせあの人形の女になんか教えてもらってるんでしょ!」


「あのな〜リサ、バピラだけじゃないがどんな世界でも力だけが一番なわけがないんだぞ?力持たない者だって権力あれば強い者だっているんだ。」


「せかい?・・・」



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「ゴーーーール!さっすが俺!ハットトリックだ!やはり世界を夢見る俺には才能があるぜ!」


「健太、こっちにも偶にはパスしてくださいよ!」


「んだんだ!」


「うるせぇ、マルス、ノーラ、お前らがパスのし難い場所にいるからじゃねーか!」


「さっかーとやらは一人でしてはいけないと教えてくれたのは健太じゃないか!」


「んだ!んだ!」


「うるせぇな!世界のスターになるには、ずば抜けた能力が必要なんだよ!地球は丸い、その世界に俺を含む僅かな選ばれし才能を持った俺とかが・・・」


「もう知らない!行こうぜ、ノーラ。」


「んだ!」


「まっ待て!マルス、ノーラ、悪かった!俺が悪かった〜〜〜!!」



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 リサはふと、過去を思い出した。そこにはサッカーで遊ぶシュールの者、独特な言葉を使う健太を思い出した。その思い出を振り返ると、つい笑みが溢れた


「フフフフ。」


「どうした?リサ?」


「あなたの独特の言葉や遊びと4年付き合ってきたけど、せかいって言葉がなんとなくわかったし、健太は本当に別のせかいってところから来たんだね・・・」


 リサは下を向いたまま話していた。今まで健太が独り言で喋っていた日本語、表現、スポーツ等、健太の文化からの物だとやっと気づいたのだった。


「リサ・・・お前やっと気づいたんたな。俺はバピラを去る!必ず俺の時代に帰ってやりたい事をするんだ!」


「やりたい・・・こと?」


 下を向いていたリサは健太を見つめた。


「そう、やりたい事だ、俺の時代にはサッカーという戦いがある。俺の戦いはバピラにはない。必ず俺をこの時代に連れてきたダークルカンに、元の時代に連れて帰ってもらうという目標の為、俺はラマにいるんだ。

 リサだってあるだろ?目標。」


「目標・・・か・・・」


 リサは健太の言葉が忘れられない言葉となった。今まで自己満足、正当防衛の教えの為に修行したレンジャーの戦い方を、別の使い方に変えようと考え始めたのだ。





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