7章 山猫族ロッヂの島

第55話 ピカトーレン帰国

「お~~い、そろそろ収穫もよいじゃろ、リサよ、帰ろうぞよ」


「は~~い」


 ピカトーレンの一角にある山、ノギサの山で採れる山菜は身体に良く病気の予防として知られている。

ここ、ピカトーレンのノギサ山にシュケルとリサは山菜を採取していた。

日も傾き、第二太陽も随分と茜色になってきた。


「施設長、今日の晩御飯はリョウの嫌いなノギサスープですねぇ。」


 西陽に向かいシュールの施設に帰る途中、リサはいかにも意地が悪そうな声で嬉しそうに言った。


「フフッそうだな、思えばノギサスープは健太もよく残していたなぁ。」


「健太・・・」


 リサはクルッと振り向きラマ国の空を見上げた。やがてまた歩き始める。


「健太、元気なんでしょうかねぇ。」


「・・・さあのぅ、シエルから何の報告もないからのぅ、まぁ研究に忙しいんじゃろうのぅ」


 リサはシュケルが研究に忙しいと言っているが、健太はレンジャー能力なし、稀に独り言(日本語)の意味のわからない言葉を使う、あり得ない知識を言ってくる等、今までの思い出を考えると、やはり健太の事が心配なのだ。



ガサガサ



「ムム誰じゃ!!」


シュケルは何か気配を感じた、リサと向い合せになり警戒する。


シュケルは目を瞑り、気配を集中させる。


「そこじゃ!!」


シュケルの土属性特技手牙狼が気配を狙う!


バキ!!


「ウギャーーー!!」


「ブワーーーー!!」


どうやら敵は二人だったみたいだ。


「ワシに不意打ちを喰らわせようなんぞ、400年早いわ・・・ってあら?リョウに・・・健太??」


「え?健太??」


リサが駆けつける。


「いってぇえええ、近づいて驚かせようと思ったのに、リョウがしくじるからだぞ~!!」


 リョウの背中に久しぶりに乗って、色々とおふざけをしようと思っていたのだが、失敗した様だ。


「健太、お前が重くなったんじゃないか?背中に乗られた時、すごい重さを感じたぞ」


そこにリサが割り込んで来た。得意の毒舌を言うかと思ったのだが・・・意外にもリサは冷静だった。


「ん!なんだよ、リサ?」


「健太のバカ!少しは連絡しなさいよ!」


連絡?出来ねーだろ、携帯電話どころか電話すらないこの世界で・・・


「・・・ただいま、リサ」


 そう言うと、リサがニコっと可愛く笑顔になり、照れながら1人で歩き始めた。


(なんだ!リサの奴、怒る時はいつも怒りながら手を出してくるが今日は口だけだ・・・フッ、少しだけお子ちゃまから大人になったか、やれやれ。)

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