第54話 初任務命令

あれから数時間が経っただろうか・・・上層部が集まる休憩所で俺は座っていた。そこへ・・・


「キミ、なかなかの強者だよね?」


 見ると上層部の証を身に着けたピクシーが声をかけてきた。健太が暴走して国民に訴え叫んだ時に止めに入ってきた彼の名は・・・


「おいおい、ボクの事忘れたのか?ピクシー族のハイムだよ。主にはバッド様に当日の予定を教える仕事とその護衛をしているのさ。つまり国王補佐官って奴だよ。しかし驚いたよ、まさか他国の人間をバッド様は外交官にしちゃうんだもんなぁ。」


(国王補佐官?ああ、メルーがカッコいいって言ってた奴か、このピクシーも蒼い、メルーと同じタイプなんだろう。)


「まったくだ、バッド様のもの好きなところには稀にため息が出る。」


 もう一人現れた。全身灰色の猫だ。彼も健太の演説を止めに入って来た猫族。よく見ると毛ヅヤが綺麗で若そうだ。


「その顔からして私の名前も忘れたな?猫族のフクって言うものだ、特殊部隊長をしている。お前のその無茶苦茶な行動・・・人間とはいえ悪くないぜ!?」


 フクは毛ヅヤが良さそうだ、恐らくまだ若い猫だ、猫族ではきっとイケメンなのであろう。

 蒼ピクシーのハイムはそのまま健太の肩に足をかけて質問をしてきた。


「しかしどうしたんだい? 凄く感情がたかぶっていたけどさ?」


 ニコニコしながらハイムは健太に聞いてくる。

しかし健太は、今のハイムのテンションに合わせて話す気分ではない為、何も言わずに、出されていたお茶を飲む。


「おいおい、無視されちゃったかな?聞いちゃいけない事だったかな?ごめんねー」


 ハイムは羽を広げ、健太の目の前で頭をなでなでする。

 (な、なんかムカつく)


「家族って・・・大事じゃん・・・」


 その言葉は健太の素直な気持ちであった。

父を亡くした健太にとって、父を亡くしたバッドを、似たもの通しとそう感じ、自然と声が暴走してしまったのであろう。


「・・・そうだね、君たち人間や猫族は親を大事にするからねぇ、まぁこれからもよろしくな、そろそろバッド様に明日の予定を教えなければならないから行くわ。早く帰って女の子とデートの予定もあるし、またな~」


 ハイムはメルーと同じピクシー族、移動するときは飛んで移動する。あっという間にどこに行ったのかわからなくなってしまった。


「まぁなんだ・・・ちょっと感情的になってしまったんだろうが、お前が追い出された後のバッド様の演説や、国民の受け止め方は衝撃的だったぜ?」


 そっか・・・結果良い方向にいけそうなんだな、よかったよかった。


「さ~て、私も業務終わったことだし、帰ろう。木下外交官だったな、頑張れよ!」


 そう言うとフクも帰っていった。

俺も帰ろう。上層部エリアを出ようとしたその時だった。


「健太!」


誰かに呼ばれたが、声からして・・・バッド王だ。


「バッド王・・・ごめん!!」


俺は自然とバッドに頭を下げていた。


バッドはため息をついた後、


「まったくお前は、危険な行動をとるチャレンジャーだよ本当に!とはいえ・・・演説に手ごたえを感じたよ。」


「そっかそれならよかった、じゃぁこれからだな・・・バッド王」


「そういう事だ、3日後早速外交の仕事をしてもらう事にした。」


「へ?3日後に?どこの国へ?」


「3日後に行ってほしいのは国ではない。実は国を持たないで生息している地域があってな。そこに行ってもらいたいのだ。」


「ピカトーレンでもバドームでもないのか?じゃぁどこにあるんだ?」


「ここから南西方面へ、海を渡ると大きな大きな島がある。その島に生息している山猫族に用があるのだ」


山猫・・・・ここから南西??まさか・・・四国か?


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