第52話 それぞれの高き感情
「クソッ!クソッ!クソッ!」
ガンガラガッシャン!!
ここはバドーム帝国部隊長控室、一人の人物が取り乱し暴れている。椅子を蹴り上げテーブルはひっくり返し、装飾品を手に持つや叩き壊している。そう、ボ=ギールである。
バピラ湖にてマキ=オースガを闇の呪縛から健太によって解放されてしまい、殺し損ね尚且つ自分自身が気を失う程の光魔力を喰らってしまった事に対し、ここ控室で荒れていた。
「ま、まぁ、まぁ、落ち着きなよ、ボ=ギール隊長。誰だって油断はあるさ。」
紅いピクシーのカイトは怒るボ=ギールに対し、半分笑った顔で宥める。
「う、うるせぇ!あんな仕打ちをされて落ち着いていられるか!」
(クッソウ!あのガキだ!あの人間のガキが現れた事でアル=バード様の計画通りにならなかった!殺す、殺す、絶対に殺してやる!)
ボ=ギールは
「ところでボ=ギール隊長、その人間と一緒にいた蒼いピクシーはタンクトップを着た年増のボインピクシーだったんでしょ?」
「・・・年増のピクシーなんぞに構ってる暇はないわ!とにかくあの人間のガキだ!クックック、次は首を取ってやるからな、クックック」
健太はボ=ギールに目をつけられる存在になったしまった。又、カイトは何やらメルーの事を気にかけている様子。
メルーとカイトの間で何かあるのだろうか・・・
★
「おいおい、どういう事だ??」
「へ?それがどうかしたのかしら?」
「え?ピカトーレンを追い出されたんじゃなくて、ラマ王自ら出て行ったのか?」
バッドが国民に言った"追放された我ら3種族と、出ていった我ら3種族''の発言に対しざわついていた。
「人間を中心としたピカトーレンの国民は猫族、ピクシー族、トロル族の3種族を差別化し始めた事は事実ではあるが、それが理由で追い出されたわけではなく、我が父、ラマ王は人間と同様、自分達で国を創って3種族を復興させる意思を固めたのだ!!」
ドヨドヨドヨドヨ
「そうなのか?俺はてっきり人間に追い出されたんだと・・・」
「俺もだよ、だから人間を許す事は出来ないって思っていたんだが・・」
「どっちでもいいさ、とにかく他国は敵だよ!!」
周りは更にざわつきはじめた。
「ラマ王は3種族が差別も争いもない、自由気ままな生活ができる環境をモットーとしたい考えで、ラマ国をスタートさせた。しかし・・・し・・・しかし!!」
(・・・ん?バッド王・・・がんばれ・・・その先を言うんだ!!)
健太は水鏡壁を見ながら心でそう思いながらバッドを応援する。
「・・・しかし・・・5年前、ラマ王は死んだ!!ラマ国民が慕えてくれた、ラマ国民が信頼してくれた我が父、ラマ王は5年前に実はバドーム帝国に殺されてしまった!この遅くなった報告をラマ王の息子である私、バッドが国民に深くお詫びする。ラマ国民の皆様、申し訳ない!!」
シーーーーーーーーーーーーン
辺りはシーーーーンとしていた。無理もないだろう。生きていると思っていた王が実は5年も前に亡くなっていたんだから・・・
「こんな話を聞いて許せないと言った国民は大勢いるであろう。だが!!それでも父とこの私を許してほしい。父が新しく創ろうとした国、ラマ国を創り始めて僅か3年で父は亡くなったのだ。その後の5年を私は特殊連隊長兼国王として今までやってきた。この8年を我がラマ・フクロッシとバッド・フクロッシで守ってきた事はご理解いただきたいのだ!!そして、私に今後も協力をしていただきたい!!今後の活動として、ラマ国を更に良い国にする為にも、私に協力をしてほしいのだ!」
周りを見るとざわつく者、ボーっと水鏡を見ている者、泣いている者まで、様々であった。健太この時いろいろな感情を持ち始めた国民を見て思ったことがある。それは、怒っている者がいない気がするのだ。
ダッダッダッダッ!
「あら?健太君?どこ行くんですか?」
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