第49話 茜色の頃
「え?・・・バッド隊長、今なんて言った?」
健太は聞きたくない言葉を聞いた気がした為、再度聞き直そうとした。
「ラマ・フクロッシである我が父は、バドーム帝国との外交交渉に出かけたその晩、交渉決裂となり、そのまま外交官と共に殺されたのだ。」
その言葉を耳にした健太。やはり自分は外交官にされて捨て石になってしまう予定だったのかと考えると、少し苛立ちが湧いてくる。
「人間なら死んでもいいや、他国の生き物だしな〜って考えだったのか?」
「違う!決してそんな考えはない!許せ、木下健太よ。外交官に他国の種族を配置する事でエルフ達に命の大切さを知ってもらおうと考えた安心なのだ。」
「ふ・・・ふざけるなバカヤロウ!それをもしエルフが受け入れなかったら俺死んでるじゃないか!」
「いや、直接バドームに出向いての交渉をするつもりはない!だから安心してほしい。」
命の大切さ、その言葉は健太とバッドの考えはどうやらお互い違うであろう。バッドは絶対に俺達がお前を殺させはしない!っという考えに対し、健太の考えは・・・
「なあ、バッド隊長、俺さ、生まれも育ちもピカトーレンじゃないんだ。今から約45億年前の過去からダークルカンにこの時代に連れ去られてしまった人間なんだ。俺の国にもさ、国王はいるんだけど、国民にすごい人気あるんだよ、何で人気あると思う?多分、俺がいた国ってずーっと平和で戦争も無い国だったから人気あったんだと思う。俺が生まれる前とかは戦争があった時代ばかりだったみたいだけど、その時の国王や国民って・・・酷い生活や政治、まぁ、俺バカだから政治はよくわからないけど、とにかく裕福さがなかったと聞いて育ったんだよ。連隊長、俺がなんでこんな事言ったか分かる?」
バッドは俺の正体に対し驚きの表情を見せていたが、しばらく話していると、俺の言った意味が分かったようだ。
「木下健太、お前の言いたい事はつまり、争いのない、平和な世の中を創る王こそが、国王の証と、そういいたいんだな?」
(ん~~~、なんか違うんだけど、大体伝わっているみたいだから、まぁいっか・・・)
「ま、そういうことだよ、連隊長。俺の秘密は研究員しか知らないから黙っててね。」
「・・・木下健太、改めて聞くが、そんな厳しい状況の中でもラマ国の外交官になってくれる・・・のか?」
バッドは少し自身無さそうに質問をする。
「断った覚えはないし、直接バドームで交渉はしないんでしょ?」
健太は拳をバッドに突き出した。それを見たバッドも直ぐに拳を当てて応える。
「ありがとう!君みたいな人間がいて本当に助かる!感謝しかない!」
気付けば第一太陽は沈み、第二太陽の弱々しい日差しが今日の終わりを告げようとしていた。バッドの部屋は高い場所、ラマ国全体が茜色に染まり、健太はこんな風景は日本から離れて久しぶりだと鳥肌が立つ程綺麗な光景であった。
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