第39話 マキの正体

 「シエル様、只今バピラ湖調査より戻りました。」


 メルーは元気のない言葉でシエルとイルグルの元へと戻った。


「メルー、無事で何よりじゃ!一体何があった!?あのリュミエールクロスはなんじゃ!?健太はどうしたのじゃ!?」


 シエルは心配そうにメルーに聞く。隣のイルグルも同じく心配そうな顔をしてメルーを見ていた。


「健太は無事です。バピラ湖の沈んだ街では色々ありまして・・・」



 健太は攻撃を止めないボ=ギールに対し、叫んだ時、身体に秘めた魔力を暴発させた。又、マキ=オースガも同じく魔力を暴発させた。その二人の魔力は光属性で共鳴し、リュミエールクロス現象を起こした。


 犠牲になったのはボ=ギールで、直ぐに気を失った。


 メルーも危うく光魔法の餌食になるところだったが離れた場所にいたから助かった。



「なるほどのう、そんなことがあったとはのぅ・・・しかしそのマキ=オースガと健太が知り合い?・・・とはいえメルーよ、お主に危険な場所を調査させてしまったな、すまぬ。」


「いえ、それよりもそのマキ=オースガですが・・・ん?」


 健太を軽く抱きかかえたエルフの女性が水面を歩きながらこちらに近づく。マキ=オースガだ


「あら?あのエルフ・・」


とメルーが小声で言う


ペコリ


マキ=オースガはお辞儀をした後、


「私はもう行かなければいけません。どうか、この方をよろしくお願いします!!」


 そう言うとマキは健太を岸辺にそっと寝かせ、そのまま上空へと舞い上がり、両手で何かをしている。


「ムム!あれは・・・」


 シエルはマキ=オースガの仕草で自然に声を漏らすが、一瞬の出来事だった為、それ以上は声が出なかった。


 マキ=オースガの仕草は幻獣召喚であった。


 召喚して出てきたのは大きな鳥に見えた。幻獣の鳥は素早くマキ=オースガを口で咥えると、そのまま空高く舞い上がり、やがて消えてしまった。


「な・・・なんなんですか師匠、今のは・・・」


イルグルは腰を抜かした状態で空を見上げていた。


「今のエルフ、まさか幻獣使いか!しかも光幻獣ライトフェニックスじゃ!」


「シエル様、これは健太に・・・」


「言うでないメルー!言うではないぞよ?この事を知ってしまうとこの健太バカはバドームに一人で行く可能性がある!健太の無茶振りで苦労するのわワシらじゃ!この事は秘密じゃ、ワシらだけの秘密にするのじゃ!」


「はい。」「わかりました。」


 素直にメルーとイルグルは、シエルの方針に従った。


「さあて、後は健太を起こしてどう説明するかのぅ。」


 シエルはマキ=オースガの正体がはっきりと判ってしまった。間違いなく、1000年前のあのエルフと人間の子、ハーフエルフの子だと・・・


第40話 贈り物へつづく


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