第37話 腕時計

 どれだけ階段を上へと進んだであろう、足が動かなくなってきた。

 健太はこれ以上は無理と思ったその時・・・


「ゼェッゼェッ、あっ、上り階段がない、最上階まで来たんだ。ハァッハァッ。」


 健太はその場で一旦息を整えようと一旦止まる。左手でひたいから流れる汗を拭い、右手はまだ、マキ=オースガの手を掴んだままだった。


「あっ、ごめんねマキちゃん、まだ手を繋いだままだったね。」


 健太は慌てて手を離す。マキ=オースガは健太の慌て様に全く動じないが、少しすると掴まれていた自分の右手をじっと見つめていた。

それに気づいた健太は声をかける。


「ごめんよ、マキちゃん、咄嗟とっさに掴んでしまったから・・・悪かったね。」


 優しい言葉で接する健太だが、ふと手首を見た時、健太はあるものを見つけてしまう。


「マ・・・マキちゃん・・・これって・・俺がプレゼントした腕時計じゃないか!」


 マキ=オースガは無表情でゆっくりと下を向き自分の手首を確認した。


「うで・・どけい・・」


「そうだよ腕時計だよ、覚えてる?流回矢るえしとは比べものにならないくらいに便利な・・・」


 健太はマキ=オースガに腕時計の話しをしようと思ったのだが・・・


ドン!!


 また邪魔が入った。そう、ボ=ギールに追いつかれてしまったのだ。

健太はボ=ギールに不意打ちで蹴りを入れられ、そのまま勢いよく吹っ飛んでしまう。


ガラガッシャン!!


 掃除用具置き場だろうか、ホウキやちりとりが並べられている場所まで飛ばされた様だった。

ボ=ギールは吹っ飛んだ健太にニヤニヤしながら

 

「邪魔なんだよ、クソガキが!」


 その行動を見たマキ=オースガは意外な行動を起こす。


「う・・・うああああああああああああああ!!」


 叫びながらボ=ギールに向かって身体全体でタックルしたのだ。


ドン!!


「ぬぉおお!」


少し当たりどころは悪かったのか、怯む時間は短かった。


「なんのマネだ、マキ=オースガ」


『け・・んた・・君を・・守る・・・』


「っちぃ、古代の言葉か!どうせろくな事を言ってないだろ!ダークルカンで時空を飛んだこの不良品が!」


バシ!バシ!バシ!


 ボ=ギールは自分の持っている矢の後側、羽丈はだけの部分で何度も何度もマキ=オースガを叩く。

健太は蹴られた痛みでまだ身動きがとれない状態であった。


「ボ=ギール!やめろ!やめろ!やめろ馬鹿野郎!!」


「馬鹿野郎だぁ?クソガキが!誰に向かって言ってるんだ!?ああん?」


バシ!バシ!バシ!


 ボ=ギールは更にマキ=オースガに対し再び叩き始めた。やがてマキ=オースガもうずくまってしまう。


「やめろ・・・やめてくれ・・・」


「ああん?なんだってクソガキ!聞こえねーなぁ?」


バシ!バシ!バシ!バシ!


 ボ=ギールは更に叩き始める。少し力が入っている様にも見えた。


「ゃめろ・・ろゃ・・やめろや・・やめろやめろ」


「クックック、だ〜か〜ら〜なんだ・・・」


「やめろーーーーーーーーーー!!!」

『けんたくーーーーーーーーん!!!』



ドドーーーーーーーーーーーーーーーン!!


第38話 マキ=オースガの想いへ続く

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