第33話 エルフの恐怖

 (な、何故マキちゃんがバピラに!?まさか、マキちゃんもダークルカンに巻き込まれて・・・ハッ!いや、違う!マキちゃんじゃない!似ている、凄く似ているが、あの独特の耳は・・・エルフだ!)


「最悪な状況ね、まさかバドームのエルフに出会うなんて・・・健太、あなたは引き返しなさい。シエル様に・・・」


「バカを言うなよメルー!相手はエルフとはいえ女性だ。話し合いから始めようぜ?」


「バドーム帝国民100%兵隊制度の国に話し合いで解決する相手じゃないわよ!?例え女性でも!」


 健太は引き返さなかった。両手で持っている竹ぼうきで身構えるも、相手が女性という思いから竹ぼうきを下に下ろした。

 その少しだけ無防備な健太に女エルフは行動を移した。両手を上げ何やら魔力を高める。


「た・・・たすけ・・・て・・」


 女エルフの頭上には渦が巻いていた。両手を健太の方角へ振り下ろし、渦巻きを放つ。


ズゴゴゴゴゴゴ!!


「う、うわぁぁああああ!」


「あ!危ない!健太!!ウォーターミュール!!」


 メルーは魔法で何やら水の壁を作った。

 渦巻きはメルーの魔法により弾かれた。方向が変わった渦巻きはそのまま壁へと衝突し、ドドーーーンと小さめな音を立てて静まる。


「あ・・・あっぶねぇ、助かったメルー!」


「また次が来る!バピラ湖調査は中止よ、健太、逃げるわよ!」


「・・・おう!」


 振り返り出口へ向かう健太だったが・・・


「待って・・・たす・・・けて」


 女エルフは再び渦巻きの塊を放つ。健太は伏せて避ける。


ドドドーーーン


 渦巻きは出口頭上にぶつかり、壁の瓦礫が落ちてくる。水の中というだけあり、周りは濁り身動きが取れない。健太は視覚を失った。


「な、何も見えない!メルー、大丈夫か!?」


どこを見渡しても何も見えない。

その瞬間、健太の右耳に激痛が走った。


「痛っ!」


 健太は右を振り向く、目の前にメルーがいる事を確認した。メルーは健太の右耳を掴み引っ張る。


「痛い痛い痛い痛い!どうしたメルー!」


「ダメよ!出口は瓦礫で完全に塞がれたわ。とにかく上へ、上へと向かうわよ!」


 健太はうなずき螺旋階段へと向かう。濁った場所から離れた為、視覚は良くなった。そのまま階段を上がる。


「ふぅ、2階に着いた。」


「まだよ、最上階まで上がるわよ!?」


「マジか!!疲れるんだぜ!?階段!」


「健太、死にたいならここで死になさい!」


 サラッと怖い事を言うメルーに、普段ならイラっとくる筈だが、今回は本当に命がないかもしれないと考えた健太は直ぐ様上の階を目指す事を考えた。

 しかし階段が見当たらない。辺りを見渡しても見当たらず、女エルフが近づいてくる事だけは確認した。


「や、やべ!」


 健太は女エルフと距離をとった、メルーは魔法でエルフに攻撃をしている。


「健太!アタシが食い止めている間に階段を見つけなさい!」


「お、おう!」


 健太はメルーの考えを直ぐに実行に移そうと、アイコンタクトし合い、移動しようとした時であった。


ドン!!


健太の腹に衝撃が走った。


「グゲ!グググググ・・・」


「クックック、その必要はない!なんせお前達は今ここで死ぬんだからな!」


「ゲホッゲホッ!だ・・・誰だ・・・」


「ボ=ギール様だ、死にゆく貴様らに本来なら名を名乗らんが、あの世でも俺様の名を知らしめよ!」



34話 バピラの仕組みに続く








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る