第32話 国が動く原因
バピラ湖に沈む謎の街。健太はメルーと共にバピラ湖の底に沈み、調査を開始。水底は薄暗く見にくいが、僅かに光る何かを見つけ、その場所へと向かうのだった。
★
一方こちらはラマ国上層部エリア。ここでは深刻な話が聞こえていた。どうやら猫族のバッド連隊長と蒼ピクシーの国王補佐官ハイムが熱くなっている様子。
上層部の会議室でバッドは両手を机に無意識に振り下ろした。
バン!!
「ならん!それでも今は耐える。耐えるしかないのだ!」
「しかしバッド様、もうこれで5人目です。もうあの国に関わってはなりません!!」
「まだ言うかハイム!しかしバドームに対等出来る事は我がラマの国力では・・・」
「そう言ってまた犠牲を増やすおつもりなのですか!?お願いですバッド様、もうバドームと交渉するのはおやめください!」
「し・・しかし、もう・・手はないのだ・・」
「バッド様・・・」
お互いの熱が冷めかけた時、もう1人の上層部兵が話し始めた。
「私に・・・策があります。」
「ん?フクか、一体どの様な策か申し上げろ、フク特殊部隊長。」
このフクと言われる特殊部隊長フクは全身灰色の猫族。スマートな身体つき、軽装備な鎧を
「はい、我が国の外交官がバドーム帝国へ交渉に出向き、そして連絡がつかなくなってしまったのはこれで5回目、正直私もハイムと同じ気持ちです。再度外交を考えるにもまた犠牲者を出す可能性も高いでしょう。我ら猫族やハイム達の蒼ピクシーが交渉するのを変えてみましょう。」
それを聞いたハイムは、おでこに指先を当てて少し考えた。そして
「待て待てフク、変えるって事はつまりトロル族を外交官にするつもりか?トロル族は前衛戦闘タイプ、とても外交官には相応しくないぞ!!」
「あっははは、トロル族では荷が重いでしょ、ボクはトロル族を外交官に推薦はしないよ。」
「だったらどう考えているんだ?まさかジョーカーを?」
「ジョーカーはラマ国にはいないのは君も知っているだろ?しかしただ1人、いるじゃないか、ラマ国古代研究所に!」
2人の会話を聞いていたバッドがピーンと来た。
「フク・・・まさか・・・」
「そう、そこにしかいない種族、今は捕虜としている人間だよ、人間を我らの外交官にするんだ。」
★
ガードレールやアスファルト、信号や車。見渡す限りは健太に見覚えのある光景がバピラ湖に沈んでいた。
「やっぱり古代の建物ねぇ、文明がすごく発達しているのがわかるわねぇ。」
メルーはキョロキョロしながらまだブツブツ言っていた。しかし健太には直ぐにわかった。日本語で書かれた看板や標識、瓦を使用した家や日本産の車が放置されている。これは、俺と同じ時代からダークルカンによって街ごと喰われてこの時代に来たって事で、おそらく間違いないであろう。
「健太、あの建物だけ光っている様だわ?いきましょ!?」
「お・・・おう・・・(ったく、警戒心のないチビだぜ!)」
「ん?何か言った?」
「あっいやいや!何でもないよ!」
危ない危ないと思う健太、2人はそのまま建物の入口へ。入口は荒れ果てており、勿論施錠はされていない。
「ん?なんだろ?健太、入口に古代文字が書いてあるのかしら?識別できる?」
「識別って・・・ちと違うだろ、えっと?どれどれ・・・あしだかいかん、芦田会館か。」
健太とメルーは入口を通過し、エントランスへと入る、かなり散らかっていた。
「あしだかいかん?何をするところなの?」
「ん〜、つまり何かイベントとかさ、式典とか・・・」
だ〜れ〜?
「え?」「へ?」
だ〜れ〜?かいるの〜?
2人はそれぞれ顔を合わせ、聞こえたよね?っと言う顔をした。
「メ・・・メルー!!」
「誰かしら、健太、気を付けて!」
カツン、コツン、カツン、コツン
足音がこちらに向かって聞こえてくる。
メルーはステックを持って警戒し、健太は足元にあった竹ぼうきを持って身構えた。
やがて足音はエントランスへと光と共にやって来た。
「あ・・・あの・・・誰?誰か来てくれたのですか?」
エントランス中央から螺旋階段があり、その上に声の本人が姿を現した。長い髪、小柄な身体つき、女性の声、どうやら女性の様だ。
「ク・・・健太、気を付けなさい!あれは・・・」
メルーは口を噛み締めながら言いかけたが、健太はその女性を見て一言・・・
「マ・・・マキちゃん・・・な・・・なんで・・・」
33話 エルフの恐怖へ続く
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