第31話 謎の声

 水中でもビュルドローの効果により息が出来る健太は、バピラ湖の底に眠る街を目指し移動した。

 下へ下へと続くが、段々と周りが暗くなっていく。


「薄暗いな、もう夕方なのか?」


「違うわよ、第一太陽が水底まで余り届いてないのよ。」


 今歩いてる場所は水底100メートルであろう。周りは夜になりそうな明るさで、不気味な感覚、勿論照明器具もない。このままいくと・・・



た・・・助けて・・・



「!!」


 健太は何か聞こえた様に感じた。一度立ち止まり、右肩にいるメルーを見た。


「ん?どうしたの健太、急に立ち止まって。」


「なあメルー、今何か聞こえなかったか?」


「え?何も聞こえてないよ?さあ、早く行きましょ?」



・・・深く重たく・・・暗いところ・・



 健太はまた何か聞こえた。いや、聞こえた事と、今朝の夢と全く同じ言葉だった。


「は!はわわわわわわ!」


 健太はクルッと方向を変え、いつの間にか小走りで引き返していたが・・・


「ちょ!ちょっと!健太!?何で引き返すの?」


 メルーは健太の服を掴み健太と反対方向に引っ張り抵抗するが、健太も必死に引き返そうとする。メルーはやむなく健太の後ろ側から服を斜め上に引っ張る。

やがて健太の首は服により締め付けられてしまう。


「グゲゲゲ!グルジヒ!」


メルーは手を離した。


「健太!どうしたのよ!?」


「ゲホ!ゲホ!ゲホ!ゲホ!ど、どうしたのよじゃねぇ!なんて事をしやがるんだ!」


「健太が急に戻り始めようとするから・・・」


少し健太は腕を組み目をつぶって考えた。

(あら?俺は一体??あ!そうだ!)


「メルー!やっぱやめよう!調査は中止だ!」


「え?何で!!」


「だってよう、いるんだよ!この湖には、うらめしや〜がいるんだよ!」


「は?うらめし屋?」


「ちが〜う!幽霊だよ幽霊!」


「ゆうれい?誰それ?」


 首を傾げ眉間にシワを寄せながら考えるメルーを見た健太は、もしかしてバピラには幽霊を見た事がない?と感じるのだった。


「メルーも何か感じるだろ?絶対に・・・」


「何を言ってるのかわかんないけど、あんま暴れないでよ!ビュルドローの空気が少なくなったじゃない!」


 周りを見ると確かに健太の周りにあるビュルドローが小さくなっていた。空気を吸うだけ小さくなる様だ。


「なあ、頼むよメルー、一度でいいから一旦戻ろうぜ?」


「やーよ!こんなに大きなビュルドローを作るにはかなりの時間と体力かいるのよ!?無駄にしないでよ!」


 メルーは少し怒り気味になっている。その時であった。怒るメルーの奥側の方角でチラチラと僅かに輝く光が見えた。


「ん?なんだあれ?」


 俺はずっとその光を見つめた。メルーも振り返り光を確認。


「さあ、時間がないわよ!?せめてあの光だけでも調査するわよ!」


「・・・わかったよ、トホホ・・・」


 健太は自然とため息を一回。そしてそのまま光の見える方向へと進むのだった。



第32話 国が動く原因へ続く。

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