第28話 1000年前の話

(な、なんだよ、じじいもメルーもそんなに笑わなくてもいいじゃないか!)


 顔を真っ赤にして恥ずかしい気持ちになっている健太に、シエルは気付いた。


「いやいやいや、すまなんだすまなんだ健太よ、笑ってすまなんだ、さあて、では出かけるぞよ?」


「へ?どこに?」


「え~~?忘れたの~~?健太、あんたが見つけたんでしょ?バピラ湖に眠る街〜。」


 街、それは先日の肴祭りで健太が魚に湖へ引き込まれた時、底で眠っていた街の事であった。健太は間違いなく自分が住んでいた時代。自分が住んでいた街であったと確信していた。


「今回ばかりはねぇ、あんただけが頼りなのよ?猫族もトロル族も水は苦手なんだから、あたしと健太で古代遺跡の調査が必要なのよ~?」


 (何!!つまり俺濡れなきゃいけないわけね。まぁ確かに獣系の種族は水を嫌うのが多いよなぁ、ドズラは溺れそうだしな・・・)


「さて、準備はい~い?さっさと出かけるわよ!?」


「お・・・おう。」





 バピラ湖は意外と遠い。メルーは羽があるから飛んでさっさと行ってしまうし、シエルは何やら砂の魔法だろうか?地面がシエルの足元だけスライドしている様に動いている。シエルは全く足を動かしていないのに、前へ移動していた。

 

(俺だって光魔法をもう少しコントロール出来る様になれば・・・)


 健太がそんな事を考えていた時だった。シエルが話しかけ出来た。


「健太よ。」


「・・・ん?何だじじい。」


「今から1000年前、まだバピラの3カ国が存在しない頃、男のエルフと女の人間が恋に堕ちた。」


「え?なんだそれ〜!あんまり興味ない話なんだが・・・」


「エルフの名前はネイ=サバツ。彼は温厚な性格であったと聞く。1000年前の時代でもエルフと人間の間では衝突が起きていた。そんなある日、人間の女は戦いで足を負傷した。」


シエルの話はまだ続きそうであった。


「ほほ〜ぅ、エルフってのはそんな時代にも存在していたんだな〜・・・」


「彼女の名前はルカ、エルフの射た毒矢が足に命中、ルカはそのまま倒れ、意識を失い死を覚悟した。

 しかし気づけば山奥の洞窟の中。不思議な事に足の毒は解毒され、意識もはっきりしていた。そう、ネイが人間のルカを助けたのじゃ。」


「ふ〜ん、俺の日本こきょうなら当たり前の対応だぜ?」


「ネイは天敵である人間のルカに一目惚れだったと噂される。それがきっかけでネイとルカは恋をしてしまった。」


「おいおい、マジかよ。種族違うんだろ?良く好きになったな!」


「ネイ達は考えた。このままではそれぞれが離れ離れになってしまう。それなら2人して戦わない地へ行こう、とな。

 そして安住の地を見つけ、そこに暫く住む事となるのじゃが、その安住の地は・・・今から行くバピラ湖ということじゃ」


「ふ〜ん、教養場マーズでそんなの教えてくれなかったが、なんでそんな事を俺に教えるんだ?」


「・・・それはのう健太。イルグルから良く聞くんじゃが、マキちゃんって誰ぞ?」


「へ?」



第29話  バピラ湖の歴史へ続く

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