第26話 健太の属性

「イルグルも健太もシエル様もずるーーーーい!!私だけ働かせてここで肴の晩酌してるなんてずるーーーい!!」


メルーはうるおい屋に来るなり、不満を漏らす。


「おお!!そうじゃったのぅすまんのぅ、おおーーい!お酒追加おねがいしま~す。」


「あ、健太、あたしのお酒が来る前に、これだけ言っておくけどね、あんた、魔力持ってるよ?」


「へ?俺に魔力が?」


「人間の健太君が!?」


「なんじゃと!!」


 ここでうるおい屋の店員が、ピクシーサイズのお酒を持ってきた。片手でお酒を取り、話は続く。


「詳しい話は一杯飲んでから・・・ね?」


(・・・魔力・・・か・・・一体俺はその魔力をどこで身に付けたんだろう・・・

 その魔力で俺はピカトーレンとラマ国の役に立つ事ができるのだろうか・・・その魔力で俺の時代に帰る事ができるのだろうか・・・まだ俺の時代は存在するのだろうか・・・)


 正直、健太は魔力が宿り嬉しかった。他国に来て身に付けた不思議な力をどの様に使用したらいいのか、ワクワクと興奮してきしてきた。


「うぉぉおおおおおおお!やったぜ〜〜!!」


 健太は歓喜高まりつい大声で叫んだ。

しかしその直後、シエルの杖が頭に振り下ろされる。


ガン!!


「痛って!!」


「やかましいわ健太!前から言っておるじゃろう!お主は人間。周りはまだお主を認めてない者ばかりじゃ!少しは自重せい!」


 健太は頭を両手で抱え、痛みを静かに耐えた。今思えばラマ国に来て3ヶ月、良くシエルの杖で叩かれると痛みを感じながら思った。


「ぷはぁ~~~!!!いっきかえるぅううううう」


「さすが酒豪のメルーちゃんと呼ばれるだけありますねぇ、一気飲みですか」


「ふん、イルグル、あんた本当はまだお酒飲んじゃダメなのよ、まだ8歳でしょ~?」


 お酒を一気飲みしたメルーに対し、イルグルが笑いながら話している。


「俺・・・16歳・・・」


「健太、あんたはねぇ、論外なのよ、水のんでなさい水」


(もう酔ってるのか?早いなメルーは・・・酔う前に魔法の使い方を教えてもらわねば。)

と、思う健太であったが、シエルが健太の魔力に対する質問を始めた。


「さあメルーよそろそろ良いじゃろう、健太の魔力の事を話してもらおう。」


 このままバカ酔いするかと思ったが、いつものメルーに戻り、顔も真剣になった。


「はい、まず魚についていた魔力ですが、健太が釣りをしていた時に、健太より魔力を発動されて付着している物とはっきりと研究の結果わかりました。この結果、健太には魔力がある事が判明したのです。」


「ぉおおおぉ」


シエルとイルグルがハモるように声を揃えた。


「あたしは一部始終見てましたが、健太が大会中に古代黒魚に食べられそうになりました。危険を感じたのであたしの魔法で古代黒魚を退治しようと思ったのですが、健太は魔法を発動させたのです。」


「ぉおおおぉ」


またまたシエルとイルグルが声を揃え、健太を見た。


「な・・・なんだよ!」


「どの様な魔法かは知りませんが、魔法で手綱を編み出し、古代黒魚を健太が操っていたのです。しかし、たかが手綱だけで魔力全てを使い切った為、気力が途切れて岸で伸びてしまった様でした。あっ!店員さん、これおかわり〜。」


「そんな事があったとはのう・・・」


「すごい、すごいですよ健太君!!」


 健太はメルーの言葉に釘付けとなったが、ところどころで疑問も持った。手綱を操る?気力?

そして改めてこのバピラは本当に未来なのか?異世界ではないのか?そんな考えが頭をこんがらがっていく。


「はい〜お酒お待ちどうさま〜。」


「は〜い、ありがと〜店員さん♪

 そして、ここからが本題です。私にも信じられないって今でも思っていますが・・・驚かないで聞いてください。」


 (な・・・なんだ・・・そんなに魔法で深刻な話になるものなのか?)


 じじいと黒助はゴクンと唾を飲み込んでいる。


「問題は、健太の属性です。ラマ国の属性は猫族の土属性やあたし達の水属性、バドーム帝国の噂される闇属性やエルフ達の風属性や私達の天敵紅いピクシーの火属性等がありますが、健太の属性は・・・どの属性にも当てはまらなかったのです。それってどういう意味か・・・シエル様ならお判りでしょう?」


 シエルの方を見ると、シエルは震えていた。怖いのか、武者震いかよくわからなかった。


「ま・・・まさか・・・伝説の属性・・・」


「そう、光属性。これが健太がもっている属性です。」


(光?なんだ光属性って??俺ってレーザービームとか出せるのかなぁ?)

ここでイルグルが割って入る。


「光属性ですって?確か1000年前に使われていた伝説の属性じゃないですか!その属性に対抗できる属性なんて、闇属性くらいな物です。」


「つまりは・・・大げさな言い方じゃが、健太がラマ国とピカトーレンの救世主になるかもしれんのぅ。」


「でも健太君、もし魔法を自在に操れるようになっても悪用するような使い方はしないでくださいよ!?もしそうなれば、国と国との戦争になる場合だってあるでしょうからねぇ。」


「あ、それと健太さぁ、バピラ湖でなんか見たって言ってなかった?」


「なんじゃ、湖で何かあったのか?」


「あ・・・いや・・・今日は魔法のことで頭がいっぱいだからさ、また今度話すよ」


「そうか、もし大事な事であれば、早めに話すのじゃぞ!」


 この後の晩酌で、あんまり魔法の話は無く、ただ酒を飲み、笑い、そしてまた飲む、気づけばうるおい屋で全員が酔いつぶれて寝ているという、ラマ国肴祭りの一日が終わったのだ。




 ラマとピカトーレンの友好関係を今後維持してバドームに挑むという計画は口だけでは実行しているが、物理的な実行はまだない。(俺もなにやら光属性の魔法の能力があるらしいし、まぁ魔力の研究をしつつ、ピカトーレンとラマの同盟計画でも考えながら過ごしていくとするかな・・・・)



27話 魔法発動の挑戦へ続く

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