第21話 肴祭り開始

 次の日の朝、ついに肴祭りの日だ。


特に優勝したからって賞金が出るわけでもなく、賞品がでるわけでもない。ただ健太は、ここで素晴らしい魚を釣り上げて・・・

「ぉおおぉ、あの人間すごい~~~。」

「ぉおぉ、また大物を~~~。」

「さぁ~~~て優勝は~~初参加で初優勝、健太様~~。」

「キャーーー健太様~~~。」

「健太様~今度一緒にデートしましょ~~~。」

・・・フッフッフってな感じになる事を妄想していた。


 朝の食事をすまし、肴祭りの受付場所へと向かう。





 やけにざわついている。ラマ国民の人口はピカトーレンと同じ約5万、そのうち3万人が一気に釣りをするとイルグルは健太に言っていた。少なくとも魚も3万匹以上いなくなる。


「おーい、健太、ここじゃここじゃ!」


受付は、シエルがしている様子。


「あら?じじいは参加せんのか?」


「こう見えてもワシはこのラマ国中央エリア地区の地区会長じゃ、つまり審査員じゃからのぅ参加する訳にはいかんじゃろ。」


 へぇ、研究所長兼地区会長か・・・シエルのじじいも大変なんだな・・・と思う健太。

受付の記入をすましかけたその時だった。


「おい!人間の奴隷!受付くらいさっさとしろ!」


 後ろから嫌味ったらしい声が聞こえる。

振り向くと、全身ブチブチ柄の猫族がイライラしていた。


「ああ・・すまん・・・」


「・・・・っちぃ・・・奴隷の分際で・・・すいませんでしただろうが!」


 (な・・・なんだと・・・このブチブチが!おれは今すぐ釣り竿につけているルアーを、このブチブチの口に入れこんでグリグリしてやろうか!)


等と健太はイライラ感を覚えたが、シエルがこっちをずっと見ている。明らかに「問題をおこすなよ!」という顔をしていた為、怒りを抑えた。


「まぁせいぜい、ラマの国民の邪魔にならない場所、そうだなぁ、昨日夜中に少し雨が降ってその辺に水たまりがあるから、そこで釣りをすればいい。魚はいないけどな!ニャーーーヒャッヒャッヒャ!!」




 (な・・・なんて性格の悪い猫だ・・・しかしここは抑えよう・・・抑えるのだ!木下健太!!)


「さ~て、じゃぁ時間が来たから中央地区の受付は終了じゃ!参加者の皆よ、これよりルールの説明をする。」


シエル直々に説明をするみたいだ。

「ルールは毎回毎回同じルールじゃが、知らない者、忘れた者といるじゃろうから、再度説明をするぞい。まずは、魔法の使用を一切禁止する!魔法で釣り上げた場合、魚に多少の魔力が残っているはずじゃからのぅ、その魔力の付着があった場合、その者は失格とする。」


 (ほぅ魔力なしか・・・魔力を持たない俺にとっては好都合。)


「次に魚を釣る場所は川、池、海と今まで通りじゃが、他国に侵入しての魚釣りを一切禁止とする。もし他国での釣りを審査員が見た場合は失格とする。」


(ん~~~実はピカトーレンに良さそうなポイントがあるんだけどな~~~・・・)


「最後に、競技中、何らかの形で他国との対立があった場合、皆の力を一致団結をし、追い払う事を約束する事!以上じゃ!さあ、終了時間は流回矢るえし3周回り4周目に入るまでじゃ!各自かかれ~~~~!!」


「うぉおおおおおお」


「ヤッタルニャ~~~」


「ぐぉおおおおおお」


各参加者それぞれが走りだし、そして散っていった。俺はそれをキョトンと見ていた・・するとここにはもう健太しかいない様だ。


「ん?健太よ、どうした?お前はいかんのか?」


「・・・あわてないあわてない!」


「???」


「あわてて釣りをすると魚も逃げちゃう、さ~て、俺の優勝は間違いないんだし、ゆっくりいくか~ってかどこで釣ろっかな~~」

俺はゆっくりと歩き始めた。





 とりあえず海沿いを歩いている俺は、いろいろな事を考えている。この海の向こう側って俺の知っている限りでは四国。その四国が存在するならば、そこはどの国の領地なんだろうか?そしてその更に向こう側は太平洋だ。南国の島やフィリピン、シンガポール、奥にはオーストラリアは存在するのだろうか?等とボーーーーっと考え歩いていると、少し大きな地響きが起きた。


ドドン!!


「ニャヒャ!こいつは大物だぜ~!」


誰かが大きな魚を釣ったみたいだ。・・・ってかおい・・・大きすぎるだろ!2メートルもある魚だ!


「お、よく見たら俺様の受付の邪魔をしていた奴隷君じゃないか!?」


(なんだ、アイツか、)健太は無視する事にしたみたいだ。


「お、おい!大物を釣ったんだぞ、なんかあんだろ?おめでとうございますとかさ、なんで言えないんだ!使えね奴隷だぜ!」


 俺は足をピタっと止めた。


「たかが2メートルのショボい魚なんかでおめでとうございますなんて言えるかよ!使えねーご主人様もどきが!」


「な・・・」


 健太はほんのすこしだけスッキリした様だ。言いたいことをとりあえず言い、また海沿いを歩き始める。


後ろの方で声は聞こえる。


「人間風情が!こんどは5メートル級を釣ってやるからな!!見てろよ!!」


はぁ・・・・海で釣りをするとあのブチブチ猫が健太を探してまた自慢してくるだろう。

そうなったらまた疲れる。健太はそそくさと川沿いを上流した。流回矢るえし4周目に入るまでってことは夕方6時頃までの競技だ、まだ時間はある。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る