第18話 ラマ国上層部
健太達はうるおい屋に戻っていた。シエルが"人間が支配していた世界、あれから・・・"を読んでいる。
「この本、実は見るのが2回目なんじゃ、タイトル通り、今から約45億年前は人間しかこの世界にはいなかったのじゃ、その人間が残した財産。それが遺跡となり、古代遺跡や古代語と呼ばれる様になった。ワシの研究では、人間はこの世界で45億年前一番栄えたとされている。健太、お主はその時空を超えてこの時代にやってきた。」
「それよりも幻獣だよ、幻獣の事とかが書いてあるページを探して!」
イルグルも3人で2冊の本を見ていたその時だった
「失礼する。ラマ国国王特殊部隊の者だ。」
突然だった。いきなりうるおい屋に入って来れば、そのまま健太達の場所まで来た。
「お前、人間だな、おまえがラマ国中央図書館に火を付けたと噂になっている。一緒に来てもらおう。」
周りがざわつき始めた。
「え?人間?」
「み、見ろ!人間がいるぞ!」
「うわ!絶対あいつが火をつけたんだ!」
健太は目でシエルを伺う。
ま、まずい、まずいぞ、シエルじじいよ、どうするのだ?じじいの顔を見るが、下を向いたままだ、何か考えているのだろうが、もう時間がない。
「何してる、早くしろ!」
万事休すか・・・
「お待ちください、上層部様。」
ここで口を割って入ったのはイルグルだった。
「誰だ貴様は?」
「申し遅れました。私は古代語研究員のイルグルと申します。実はこの人間、今日コッソリと捕獲したピカトーレン国の捕虜なんです。」
「なにぃ!捕虜だと?そんな話聞いてないぞ!捕虜を捉えたなら、我ら上層部受付で申告しないといかんだろう!」
「あいにく捕獲したのは第2太陽が沈んでから、受付が閉まっていましたので、明朝に申告しようかと。」
「むぅううう、じゃぁなぜ象徴たるラマ国中央図書館に火が付き跡形もなく崩れたというのだ!」
「その事ですが、ワシから説明をさせてください。」
ここでシエルが割って入る。頼むぜ、じじい!と、健太は思うしかない。
「人間は我らをピカトーレンから追い出した種族、断固許されるべきではありません。しかし、私とこのイルグルは考えたのです。1人の人間を人質とし、バドームへの食料献上量の見直しを要望しようと考えたのです。さすれば、我らラマ国の経済は、ほんの僅かかもしれませんが、良くはなります。」
「ほぅ、まぁよくわからないが、そういうことは貴様らではなく、我ら上層部に任せておけばいいのだ。」
「はい、申し訳ございません。やはり敵も反抗はしてきました。おかげで別の人間が図書館に火を放ったのです。」
健太は複雑な気持ちで会話を聞いていたが、ぉおぉ、なんか無茶苦茶な嘘だが、なんか期待できる・・・と、そう感じながら聞いていた。
「なるほど、つまり、ピカトーレンの者がこの捕虜を助けるべく、図書館に火をつけた、しかし、失敗して国へ去っていったと。そういう事なんだな?」
「はい、そういう事なのです。」
きっぱりとイルグルは答えた。
「よかろう、とはいえこの問題は国の一大事だという事に変わりはない。あとは上層部にて会議をし、その人間の小僧の処罰を決める事とする。」
「それなんですが、お願いかあるのです。」
イルグルは何か策がある様子?もしバレたら健太は・・・
「よし、申せ。」
「この人間はまだ未成年の子供です。本当は成人した人間を捕えようと思ってはいたのですが、こちらの落ち度により、未成年の捕獲となっていしまいました。私も未成年ではあるのですが、この小僧を私が責任をもって管理します。なのでこのラマの国で奴隷として試してみようかと思っているのです。」
「なっ!・・・」
(黒助の奴隷だぁ??)
思わず声が出てしまったが、それでも健太は堪える。
「ほぅ、若いの、なかなかの案じゃないか!?」
「人間を捕虜、奴隷として使えるかの検証は恐らくラマ国初の事です。上手くいくかどうかはわかりませんが、挑戦してみたいのです。」
「・・・・わかった!私から国王補佐官のハイムに言っておこう」
(・・・おいおい、話がどんどん大きくなっていってるじゃないか・・・)
「いえ、上層部様、まだ幹部の皆様には内緒にしておいてもらいたいのです。」
「ん?なぜだ?」
「先ほども申し上げた通り、まだ未成年です故に、捕虜や奴隷等という噂を広めたくはありません。もう少し、ピカトーレンより出来るだけ家族を失っている捕虜を捕獲できればと考えております。その私の計画が上手くいったら、ラマ国王様もお喜びになるのではないかと思います。今申し上げて失敗した時のショックを受けた国王様を私は見たくはございません。」
(なんというプロセスだ!黒助の奴、侮れん奴だ、この場はとりあえず大丈夫そうだが、今後俺はここで捕虜のカモフラージュをしないといけないのか?)
「・・・確かイルグルと言ったな、お主のその素晴らしい計画、この私、ラマ王国上層部特別連隊長のバッドが確かに承った!イルグルよ、お主も若い、いろんな事に挑戦し、精進せよ!」
「バッド様、ありがとうございます」
イルグルは土下座をし、頭を下げた。特別連隊長と言われる猫族のバッドはそれから振り向く事はなく、うるおい屋から出ていった。
「た・・・助かった・・・助かったんだ・・・黒助・・・一応礼は言っておくよ。ありがとう。」
健太はイルグルに頭を下げた、おそらく頭を下げ、ありがとうと言ったのは健太にとっては生まれて初めてであった。その仕草は無意識に出来たのだ。
「むぅ・・・しかし今のはその場しのぎじゃ!いつまでもこのままじゃ、いつしかバレるぞよ。」
シエルの言う事もそうなのだが、これからどうすればよいのだろうか・・・
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