第17話 ボ=ギール隊長

イルグルは6冊の本を出した。おそらくドズラは袋に本を詰めている時に、服の中にも本を入れていたと考えられる。

 その6冊の本がどんな本か?実際に見てみる事にした。


"ミルク料理教室"

「なんだこれ?いらねー」


"猫族は毎日爪を研磨すべき"

「はあ?勝手にその辺の木で研げばいいだろ?」


"究極水魔法と蒼魔法のコツ 2級"

「メルーにこの本で勉強させてしまえ!」


"トロル族限定、ラマ国デートスポット"

「トロルに男女いるのか?」


4冊は大したものではなかったが、5冊目は・・・


"人間が支配していた世界、あれから・・・"

なんとも興味深い本だった。


 しかし最後の6冊目は、更に興味深い本だったのだ。


随分古く、本がボロボロで資料の様な形になっていたが、タイトルが日本語で書かれていた。


"隕石墜落しても、地球は45億年は生き続ける理由"


 どういう意味だろうか?健太がいた時代から45億年経っても地球は存在する理由が書いてある本なのだろうか?

 それとも健太とは別の時代に落ちた隕石の事なのだろうか?


 いずれにせよ、地球という表現が使われているから、俺がいた世界に非常に近い時代の気がする。


 この2冊の本は重要参考書として、一度目を通しておく必要がありそうだな。


「おい、健太よ、とりあえずうるおい屋へと戻るぞ。特にお前は人間だ、あまりウロウロしてると怪しまれる。」


シエルは辺りを見渡しながら健太に言う。


「わかった、うるおい屋でこの2冊の本を調べる。」


こうして健太達は、うるおい屋に戻る事にした。




 健太達が去った後、1人図書館跡地より出てきた。紅いピクシーのカイトだ。


「フフッ、ピカトーレンとラマが協力しているみたいだねぇ。我がバドーム帝国に敵対する為であれば、2つの国を消さねばならない。あいつらが一体何を考えているのかは知らないが、暫くはそっとしておくか。フフッ」


 カイトはうるおい屋へ移動している健太達を飛びながら独り言をつぶやいた。


「甘い、相変わらず甘いのう、カイトよ。」


 どこからか、声が聞こえる。


「ん?な〜んだ、いたのかボ=ギール隊長」


 どうやらカイト以外に誰かいた様だ。ボ=ギールと言われるこの人物。長く尖った耳に青い瞳、見た目人間だが、少し何かが違う。


「クックック、カイトよ、俺なら間違いなくあのトロルと人間のガキを殺していたぜ!?」


「フフフッ、あなたじゃ役不足なんじゃない?人間のガキはともかく、あのトロルなかなかの剛力だよ?」


「カイトよ、俺があの低脳民族のトロルより劣ると言いたいのか!?」


 ボ=ギールは何やらカイトの発言により御立腹の様子。


「アッハハハ、そんな事で怒んないでよ。まったくエルフって種族は短気なんだから!それとも今回の手柄はボク達第4部隊だけど、君達の第3部隊が横取りするつもり?」


「・・・フンッ!いちいちイラつく事を言うからだ!」


 ボ=ギールと呼ばれるこのエルフ、どうやらバドーム帝国第3部隊隊長の様だ。一体どの様な人物で、どの様な国なのであろうか。


「さて、目標である図書館の本を燃やした事だし、帰ろっと・・・あっ、そうだ、ボ=ギール隊長さあ、ラマ国に来て、金髪の蒼ピクシー知らない?昔はタンクトップにビキニ姿の格好をしていた年増の蒼ピクシー、今もそんなエロい格好しているかわからないけど、見なかったかなぁ?」


「知るか!ラマ国の生き物なんぞに興味ないわ!」


 そう言うとボ=ギールは、カイトより一足先に風魔法を使い、消えていった。


「・・・まいっか。また来た時に殺せば。」


 カイトもそのまま空高く飛び、紅と蒼の粒子を放ちながら去っていった。



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