第15話 バドーム帝国のピクシー

「げんた!で〜じょ〜ぶが?ぎをづげろ!ごいづはオーグだ、オーグ。暴れはじめだら、どまらなぐなる」


 どうやらこのオークは会話が出来ないようだ。

オークは健太とドズラから目を離す事なくジッと見ている。そしてさっき刀で切って落とした本を、火のある場所へと蹴りながら本を移動し、燃やしているのだ。


「あああ!だいじなぼんがもやざれでいる!やめど〜!!」


 と、ドズラがオークを突き飛ばした。オークは勢いよく奥の壁まで突き飛ばされた。壁は熱を持っていたんだろう、ものすごい熱さにオークは独特な叫び声を上げ苦しんでいる。

と、その時、


「っふ、トロル風情が俺の舎弟を随分と可愛がってくれたじゃない!」


 もう1人誰かいる!!しかし姿は見えない、どこにいる?2人は辺りを見渡し警戒した。


「しかし驚いたよ、ラマとピカトーレンのコラボ?噂は聞いてはいたが、あんた達、もしかして同盟してバドームに牙を向くつもりなの?」


「だ、誰だ!!」


 健太は自然と叫ぶ様に声を出した。自分が少し脅えているから大声になる。

 そして、先程の声のする場所に向かって言ってみたが姿が・・・いや、いた!


「我がバドームの命令でラマ国中央図書館を破壊する事を国の上層部より我らに伝達があった。俺の名はカイト、基本紅いピクシーだがこれでもバドーム帝国第4攻撃隊長だ!」


 基本紅いピクシー?メルーみたいな蒼いピクシーではなく、紅いピクシーか・・・確かに紅い粒子が舞っているが、蒼い粒子も舞っている気がする。左頬に傷がある様だが、このピクシーは一体・・・


「最近、貴様ら2ヵ国の国民が不審な動きをしていると我が国では噂になっているんだよ。過去について調べ始める者がいるとも聞くし、我が国の上層部からすると、都合が悪いんで、ここの本は全て我が紅魔法にて燃やし尽くしま〜す!!」


 何⁉︎バドームの上層部?都合が悪い?何を言ってるのかさっぱりだが、俺がこの世界に来てしまった理由を知っていそうな発言だ。


 バドーム帝国は謎に包まれた国とよく聞いたが、噂は本当みたいだ。

 しかしもう、考えている暇はなさそうだ、カイトと言ったか?あのピクシーが何やら唱え始めた。おそらく火力を増加させるつもりだろう。


「燃え尽きろ!紅い魔力にともしび火力よ!蒼き魔力と調和せよ!いっけぇぇぇええええ」

 わずか身長20センチ近くしかないピクシーが、直径50センチ近くの火の玉を頭上に作り、オークが燃やし損ねた本に向けて飛び始める。


「あ、あぶねえど、げんた!にげるど〜〜」


 ドズラが右手で俺を抱え、一歩一歩ドスンドスンと図書の部屋から離れる。カイトは火の玉を本に向かって投げた。


「あぶねえ!ぶぜろ〜〜」


ドドーーーーーーーーーン!!

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