第14話 火事

「メルー、何事じゃ!!」


「ラマ中央図書館が火事よ!」


「なんじゃと!!」


 健太たちは外に出た。確かに中央地区の図書館辺りが明るい。松明たいまつの明るさでは無さそうだ。やはり火事なんだろう?


「むぅ、あの図書館には過去の歴史資料がある。燃えてしまっては次に進まぬ。一か八かじゃ、せめてまだ燃えていない本や資料を回収するのじゃ!イルグル、健太、行くぞ!!」


「はい!」


「おう!」


 図書館はここから遠くはない。4人は図書館へ急いだ。




 図書館付近に着いた。図書館の関係者だろうか、数人の猫族と小さなピクシーが倒れていた。その中でも1人大きな巨体が倒れているのに皆気付く。そう、トロル族である。

シエルを先頭に、巨体に近づく。


「ドズラよ、一体何事じゃ?何が起こった」

シエルは声をかけ、杖で顔をグリグリしている。暫くすると、意識を取り戻した様子。


「んんんんんんん・・・ばっ!じ・・・ジエルざま!」


「ドズラ?どうしたの?一体何があったの?」

今度はメルーがドズラの顔付近まで飛びながら近づき問いただす。


「あっあう〜〜メル〜、とじょがんが急にばぐばづじで〜・・・」


「爆発したじゃと?」


「師匠、何か悪い予感がします。しかし今は火を消して、図書館の本を少しでも外に出す事を優先させましょう!」


 イルグルの発言に皆がコクリと頷いた。

ものすごい火の勢いだ。シエルとイルグルは魔法だろうか、何やら唱え、土魔法を火にぶつけた。火は瞬く間に消えていく・・・かと思ったが、弱まった火は再び強さを増し、元と同じ強さになる。


「師匠、これはまさか・・・」


「・・・うむ、これは風魔法・・・こんな小細工を仕掛けるのはバドームの手の者の仕業じゃな」


 風魔法?健太はマーズの授業で思い出した。確か聞いた事がある。原料は主には草や葉だが、発火しやすい特殊な成分だけを固めて風を利用するまやかしの魔法、それが風魔法。


時間は刻々と過ぎる、シエルは皆に指示を出した。


「健太よ、ワシとイルグルの魔法で砂嵐結界を張る。少しくらいの時間は火を抑制出来るはずじゃ!その時間、ドズラと共に出来るだけ本を外に運び出すのじゃ!メルーよ、お主もワシらのサポートに入れい!」


「わかった!」


「わがっだ、おで、がんばどぅ!」


「わかりましたシエル様」


 直ぐに取りかかった、砂嵐結界は猫2匹とピクシーのサポートで大きな砂嵐が発見、まぁ、砂のスプリンクラーみたいな物だろうか。少しの時間って事は想定約3分しかない。


 健太の心の中では、今後俺に携る資料が必ずあるはず。燃えてなければそれらを回収したい。

そんな気持ちでいた。


「よ〜〜じ、げんだ〜、いぐど〜!」


「おう!」


 健太とドズラは図書館の中に入った。抑制とはいえかなり熱い。身に付けている猫のローブのおかげで多少熱さには耐えている。図書館とはいえ、コンビニの大きさくらいの部屋だから本の回収は簡単そうだ。


 あるある、まだ燃えてない本が沢山まだあった。


「よし、ドズラ!持てるだけ持って出よう。」


「おで、袋もっでぎだんだで!」

ドズラの持ってきた袋に詰め込んでる時だった。


「‼︎」


「ん?げんだ!どうじだ?」


「シッ、誰かいる」


 人の気配がした。誰かこの火事で逃げきれなかった人がいたのかもしれない。


「誰かいますか?今なら火は抑制されてますから、入口から出れますよー。」

・・・おかしい、誰もいない?明らかに誰かいた気がしたんだが・・・


「げんた、ぞろぞろでよゔ、シエルざまもじんばいずるがら」


「あ、ああ、そうだな・・・」


 撤収しようとしたその瞬間、いきなり袋に入れてだ本がボトボト落ちる。


「あら?なんで?」


 よく見ると袋が切れている。おかしい、こんな簡単に切れるような袋の素材では・・・


「げんた!あぶね!!」


 ドズラが叫び健太を突き飛ばす。

突き飛ばされた直後、大きな刀が空を切る。

突き飛ばされた俺は刀を見ると、大きな刀を持った何者かがそこにいる!

「だ、誰だ!」


 なんだ?コイツは、人間ではなさそうだ、マーズで教わった種族の授業で考えると、おそらくバドーム帝国の種族・・・


「グルルルル」


健太はその姿を見て直ぐにわかった。


「ドズラ、間違いない・・・アイツは・・・バドーム帝国の奴隷ランクに位置付けられた種族、オークだ。」

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