第13話 動き出した影

「!!ギャ!!に、人間!!師匠、これは!!」


 振り向いた先の人物は真っ黒な毛艶、黒以外の部分なし、全てが、黒の猫族だった。イルグルはそのままシエルの横に座った。


「うむ、イルグル、紹介しよう。ピカトーレンの人間である、コヤツは健太と言う。」


 誰がピカトーレンの人間だよ!って思う健太。会話は続く。


「は、はぁ・・・しかし何故人間がラマの国に?」


「ん〜〜〜、簡単に言うとのう、新しい研究員じゃ!」


 おいおい、ふざけた事を言ってんじゃねえぞ、くそじじい、何が研究員じゃ!

 そう思いながらも健太はイルグルに無言でペコリとお辞儀をする。


「おお!他国の研究員だなんて、私そこまで考えつきませんでした。さすが師匠です。ラマの国へようこそ、よろしく!健太君!」


(・・・この黒助もリサみたいなバカかもしれんな・・・

リサだ、アイツと同じキャラの匂いがする。)


健太は何となくそう感じた。


「健太よ、聞けばお前は16歳と聞く。イルグルは今8歳じゃ。種族は違うが、我ら猫族の寿命は人間の半分。お主らは今同じ年位じゃわい。」


「???さっきから何言ってんだ?じゃあ俺が20歳になったら黒助は12歳になって半分以上の年齢になるじゃねーか⁉︎」


「・・・し、師匠、これは健太君に一本取られましたね・・・ってか黒助って・・・あ!この本!地球じゃないですか!」


 イルグルはシエルが地球の映ったページを開いたままだった為、健太の社会の教科書を見た模様。


「健太君、この本、貸して下さい!こんな素晴らしい古代文字とカラーの絵、図書館でさえありません!」


「・・・1,000円で売ろう。」


冗談混じりではあるが、俺は金を取る事にしてみた、すると。


「ニャニャニャ?せんえん?健太よ、せんえんとは一体何じゃ?」


 メルーにお酒の酌をしてもらい、グビッと飲み終えたシエルが、円について聞いてくる。するとイルグルが応えはじめた。


『円、それは古代文明の人間が人と人との交渉をする為の取引に使う表現。って事ですよね?健太君。』


 健太は驚いた。イルグルがいきなり日本語を話し始め、円の理解までしている。この黒猫は一体何者なのだろうか・・・


「今の言葉が通じたり、円の事を知っているって事は健太君、あなたはピカトーレンの古代研究員なんですね?」


「違う、健太は古代から来た流れ者じゃ!」


 シエルはあっさりと健太の正体をイルグルに話してしまう。

健太は未来にタイムスリップし、過去を研究しているシエル達に質問した。


「なあ、俺ずっと聞きたかっんだけど、その古代文明の俺達って絶滅したの?」


「45億年前の人類は、45億年前に絶滅しておるぞよ、地球はのう、一度別の惑星とやらとぶつかって崩壊したのじゃ。それも45億年前じゃ。地球は崩壊してからもう人類は生存しないかに見えたが、再びこうやって人類が誕生し生きておる。地球は完全に死んではおらんかったと言う事じゃ。

 そりゃ45億年もの年月があれば、ぶつかった地球も少しづつ丸く戻り、大気が生まれるじゃろう。地球は人間が支配し、猫族やウルフ族等を傘下にしていたと古代文明の研究でわかったが、今の時代は違う。今のワシらはバドーム帝国の・・・」


「あら?ねぇ、シエル様?あれ何かしら?」


 シエルの話の途中だったが、急にメルーがテーブル越しに飲んでいた中、外を見ながら言った。


「むむっ、何じゃろうな、図書館の様じゃが。」


皆が窓から外を見渡す。図書館がいつもより更に明るく感じる。


「あたし、ちょっと様子を見てきます。」


「うむ。気を付けるのじゃぞ!」


 メルーは窓から飛び出して蒼ピクシー独特の粒子をなびかせながら飛んでいった。


「う〜む、何か悪い予感がするのう・・・」


「ですね、最近ラマ国中央地区は物騒ですよ。」


 シエルとイルグルは、メルーの行った方向を見ながら話をしている。

 健太はふと思った。このうるおい屋に来たのは良いが、まだ何も食事をしていない。テーブル上にあるのは魚、魚、魚、魚しかない。期待はしていなかったが、肉好きの健太にとっては物足りない。健太はメニュー表を

見ていたその時であった。


「シエル様!!大変、大変よ!!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る