第10話 出発準備

 4年前、俺は闇の幻獣、ダークルカンにこの地、バピラに連れ去られてしまう。当初は異世界に迷い込んだと思ったが、どうやら45億年後の未来にタイムスリップしてしまった事に気付いてしまう。

 ピカトーレンのシュケルの施設"シュール"で親を失った子供達、ウルフのリョウ、ラウル。リザードマンのマルス、ノーラ。人間のリサと俺の6人が、シュケルの手伝いをしながら、4年過ごした俺に、隣の国の住人、猫族のシエルと蒼ピクシーのメルーよりラマ国への勧誘に誘われた。

 俺は・・・コイツらと共に行動すれば俺の時代に帰れるかもしれない。そう思い、その誘いを受けた。




「シュケルよ!」

険しい顔をしながらシエルはシュケルを呼ぶ。


「なんじゃ!?」


「四年前の約束を忘れてはいないだろうのう?」

シエルは4年前に話した事を言っている様だが・・・


「・・・フンッ!さっさと連れて行けい!ワシの気が変わらぬ前に。」


「うむ・・・今のワシらはピカトーレンとは敵国、素早く国に戻る事にする。健太よ、大至急荷物を纏めい!直ぐに出発じゃ、行くぞ!」


 シエルとシュケルの間で何やら交渉が成立した模様。その時健太は、人を商品の様な発言をしている2人に対しイラっとしたが、新天地で良い方向に進む事を信じて堪えた。


「シュケルじじい、シュールの施設に俺がバピラに来た時のバッグとサッカーボールがあるから、それだけを持っていくよ。」


「うむ、行く場所は敵国じゃ!気をつけるのだぞ!?って誰がじじいじゃ!」


 そう、シュケルの言う通り、行く場所はラマ国。シエルとシュケルが以前考えていた、"再びピカトーレンとラマを一つに"と言う言葉は一体どう言う意味があるのだろうか。

そんな言葉には、実は余り興味がない健太は今後どの様な人生を歩むのであろうか。





 時は既に夕暮れである。流回矢るえしも3周を過ぎ、残り1周で今日一日は終わってしまう。第1太陽は完全に沈み、第2太陽は沈みかけていた。

 健太達全員はシュールに移動していた。シエルとメルーは健太の準備待ちである。健太が荷物を纏めている間、シエルとメルーは客間でシュケルと待機していた。何故かリサも紛れ込んでいる様だが・・・


「シエルのクソじじいよ。」


「なんじゃシュケルのクソじじいよ。」


「健太は実際、古代研究所の研究員だけが目的で連れて行くわけではあるまい。何が目的じゃ?」


シュケルの質問に対し、シエルとメルーは一度、顔を見合わせた。その後、長々とシエルは話し始める。


「まあ、8割は古代研究員として迎え入れるつもりで4年前に目をつけた。健太の古代語は世界を必ず変える。そう思うのじゃ!

 それに健太は自分の時代に帰りたいと考えておる。おそらく、ラマ国の中央図書館に行けば、帰る近道があるやもしれん。ワシとメルーはずっとそう考えていたんじゃ・・・が・・・」


「ん?が?がとはなんじゃ?がとは。」


 再びシエルとメルーは顔を見合わせる。そして今度はメルーから話し始めた。


「あの時あたしが健太にウォーターバルンで水の中に閉じ込めた時、そこにいる人間のお嬢ちゃんが石を投げたでしょー?あれって本当は当たってた筈なんだけど、当たらなかった。何故だと思う〜?

 これはね、シエル様とアタシの予想なんだけど、健太って人間の癖に魔力を持っているかもしれないのよ。」


「なっなんだと!」


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