第9話 健太の決意

「・・・すごい・・・すごいよ。」

 健太はシエルとメルーを見て絶賛した。


 感動している健太に対し、シエルは看板の説明に入る。

「そうじゃろそうじゃろ、ニャハハ!この遺跡はな、お前が現れたあの付近の・・・」


「すげーじゃねーかチビ!今のが魔法か!?俺魔法初めて見た!なあなあチビ?今度さ、俺にも魔法を教えてくれよ〜。」


「な・・・チビですって?」


健太は看板の文字よりも、メルーの放った魔法に感激してしまった様だ。


「これ!?小僧よ、この古代文字にも注目してくれ!なんて?なんて書いてあるのじゃ?」


 シエルは再度、看板に書いてある文字を健太に問う。


「これは俺が行っていた塾の看板。大学にいくなら塾行けって書いてあるみたい。え?し・・・新生塾の看板?」


「じゅく?また新しい発見をしたようじゃ♪だいがくとはなんぞ?」


 健太は決して自分が行っていた塾を忘れたわけではない。看板の事よりも、メルーの魔法に気を取られていただけであった。


「塾も大学も、この世界で言うマーズみたいな勉強する場所だよ、なんでここに塾の看板が・・・俺本当にタイムスリップしたのかもな・・・」


「こぞ・・・健太よ、今バピラでは、幻獣の影響で悪い方向に変わりつつあるのじゃ、お主の知識が必要なのじゃ!ラマ国の古代研究所に来てくれんかのう?」

 シエルは健太の勧誘を諦めず、シュケルを通さず直接健太に聞いた。

しかしそれに対してリサがまたまた口を挟む。


「待ちなさいよ!ラマの方、健太の妄想癖に騙されているだけだから!連れて行っても役に立たないわよ!?」


 リサは未だに勘違いしている様だが、健太は他国勧誘を拒否した。


「はあ?やなこった!なんで俺が猫やチビ人形達と一緒に生活しなくちゃいけねーんだよ!」


「な・・・またチビって・・・人形ですって〜!?」


「幻獣の影響で悪い方向に向かってるだぁ?そんなの俺の知った事じゃねぇ、俺はそんな事よりも、俺の時代に帰る事が大事なんだよ!そもそも俺の時代の猫や人形はなあ?人間様の・・・アブ・・・ゴボボ・・・」


 いきなり健太が水に包まれた。水は健太を中心に、直径2メートルくらいの円形型で包まれている。

そう、蒼ピクシーが得意とする水魔法であった。メルーは健太を水で包み込んだ。


「チビ?人形ですって?人間なんて何も能力を持たないただの生きる屍のくせに、生意気よ!?」


「ンンン!ゴ・・・ゴボレル!!ガガガ・・・ブブブ」

 健太は息が出来ず苦しんでいる。


「ニャハハ、健太よ、今のはお主が悪いぞ〜。」


 周りでは、シュケルもリョウもその姿を見て笑っていた。しかしリサは笑うどころか、足元にある小石を拾い、メルーに投げつけた。

 石はメルーには当たらなかったが、健太に対する魔法は消え去った。


「ゲホッゲホッゲホッゲホッ!」

どうやら健太は助かった様だ。


「い、石!?ちょ、ちょっと!あなた危ないじゃないのよ!!」


「危ないじゃないわよ!そのまま当たればよかったのよ!!人間をバカにしないでよ!」


リサは健太だけでなく、メルーにまで喧嘩を売ってしまったが、健太は溺れずにすんだ。


メルーはリサを睨みつけたが、直ぐに我にかえり、シエルに話しかけた。


「・・・シエル様・・・健太はもしかして・・・」


「うむ・・・しかし人間じゃから勘違いかもしれんがのう。」


 何やら意味のわからない会話をしていたが、咳き込みが収まった健太はシエルとメルーに向かい。


「勘違いするなよ!お前らの国に行ったら、俺の時代に帰れる、そんな気がする。だから行くだけだ!俺をお前達の国へ連れてってくれ!」


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