第8話 真実

 [ピカトーレンで4年過ごした健太、今彼はまた環境が変わるかもしれない状況となっていた。ラマ国の猫族シエルと、蒼ピクシーのメルーはどうやら健太を迎えに来た様子。

シュケルは健太を素直にラマ国に向かわせるのだろうか?又、健太も素直にラマ国に行く覚悟はあるのだろうか。]




「小僧よ、ワシらを覚えておる様じゃな!」

平和な日本で過ごしていた少年が、いきなり宙で泳いでいた黒いサメに食べられ、気付けばこの地に来た。そんな非現実な事が起これば誰だってその日の事は覚えている物だ。


「ああ、覚えてるさ!さあ、早く元の世界に戻してくれよ。」

木下健太、16歳。シエルと出会った時は12歳で、健太の方が身長は低く、脅えていた。しかし今の健太はシエルより身長は高く、シエルを見下ろしながら応えている。


「元の世界?やはりお前は古代の人間なんじゃな?」


「な、なあ、それってどういう意味?俺さあ、この異世界に来て全くわからないんだけど・・・」

 健太の言葉に対し、シエルはシュケルを見た。


「・・・シエルのクソジジイよ、健太に全て教える時が来た様じゃな・・・」


「な・・・なんだよ、じじい2人して!」

シエル、シュケルと2人をキョロキョロと首を振って見廻す健太だが、シエルは話し始めた。


「先ずは小僧!この地はお主が言う異世界ではない!」


「へ?」


「我がラマ国古代研究所の調べによると、おそらく45億年前の過去文明よりお前はやって来たと想定される。お前も知っての通り、時空を操る幻獣、ダークルカンに連れ去られてこの時代にやって来た、それがお前じゃ。」


「・・・・」

 健太は斜め下を向き、何も言わなかった。ワクワクしてきた訳でも、ショックだった訳でもなかったが、少しだけ落ち込んだ様子。


「・・・・施設長じじい、幻獣って何?」


「見た通り、幻の獣じゃ、いわゆる魔法じゃが・・・あんな恐ろしい幻獣を扱えるのはエルフくらいじゃろ。」


 エルフ、どんな種族なのか健太は知らない。バピラに来て、まだエルフを見たことがないのだ。


「つまりエルフが使った魔法でダークルカンが現れるんだろ?じゃあ俺エルフ達に会いに行く!。」

俺がそんな事を言った時であった。


「エルフに会いに行くですって?冗談じゃないわよ!!」

ここで口を挟む様に割り込んできたのはリサである。


「アタシの両親はねぇ、バドーム帝国のエルフ達に連れ去られたのよ!?一度連れ去られたら最後、命は無いと聞くのよ!?そんな危険な事をよくも軽々しく言えるわねぇ!」


「ああん!?んな事知るか!俺には日本という帰る場所があるんだよ!」


「にほん?またはじまった、健太独特の言葉。にほんなんて街も国も存在しないと何度も言ってるでしょ!バドーム、ピカトーレン、ラマ、この3国しか存在しないのよ!」


 なんでリサは毎回こんなにトンチンカンなバカヤロウなのか、リサと口喧嘩をすると毎回頭を抱えてしまう。健太の悩みの一つであった。


 なんで健太は毎回空想の世界を描いた国や言葉を考えるのだろう、頭おかしい健太を他国へ連れていくわけにはいかない!

と、考えるのがリサの悩みの一つであった。


「まあまあ、お二人さんそう熱くなるでない!」


健太とリサの口喧嘩に対し声をかけたのは、シエルであった。更にメルーが声をかけてくる。


「あなた達人間の古代文字を半年前に見つけたのよ、その一部を持ってきたから見てくれる?」


 古代文字、それはまた大袈裟な表現だと健太は感じた。一体何を見せようとしているのだろうか。


「メルーよ、凝縮した古代文字を元の大きさに戻すのじゃ。」


 シエルはメルーに命令した。メルーはコクリと頷き、何やら魔法を詠唱している。


「ウーンヌンヌンヌンヌンヌンヌン!」


何やらメルーの目の前に小さな時空間の様な空間が見える。そこから何やら白い物をメルーは取り出した。


「フゥ、この白い物体を、原寸に〜・・・エイ!」


 メルーは小さなステックを右手で持ち、クルクル回して最後に1回だけ振った。すると、白い物体は大きくなった。


「どうじゃ?健太こぞう、何か思い出したかの?」


 シエルは健太の返事をワクワクしながら待っている。


「こ・・・これは・・・看板。」


「うむ、で?何て書いてあるのじゃ?」


シエルは一番テンションが高い様子だが、そこに書いてあったのは・・・



『勝ち組となるのは君だ!新星塾』





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