第7話 再開

【あたし・・・あの時・・・】


「ハッ、イズミさん!!イズミさん!!しっかり~~!!」

「ルー、逃げ・・・メルー・・・つ・・たき・・・あな・・う・・・て・・・」

「イズミさん・・・う・・ううう・・・・」


【イズミさん・・・ごめんなさい・・・】




「ルーよ。」


「メルーよ。」


「メルー!メルーよ!!」


 さっきからシエルはメルーを呼んでいるが、全く反応しない、どうしたのか。


「ハッ!!はいはい、何でしょうシエル様!ごめんなさい、あたしまたボーっとして・・・」


 メルーは考え事をしていたが、我に帰りキョロキョロする。


「メルーよ、大丈夫か?」

真顔でシエルは心配している。


「あっはい!お恥ずかしいところをお見せしました、申しわけありません。」


「・・・あの丘上まで行ったら少し休憩するかの?」

 メルーはコクリと頷く。

 シエルはメルーを気遣い休憩を考えた。単にボーっとしていただけで、敵国に侵入後に休憩する事にメルーは申し訳なく感じながらも、休憩する事を望んだ。

 しかし、丘上に向かうシエル達ではあったが、先客がいた様子。


「ムニャ?あれは・・・」





ピシッピシッピシッ


「行け行け〜リョウ!丘上の一本木までもう少しだ!」


リョウの背中に乗ったまま、健太は拾った枝木を鞭代わりにしてリョウのケツを叩く。


ピシッピシッ!


「イテテテ、叩くなよ!少しは加減しろ!」


「我慢しろ!さあ、ラストスパート、心臓破りの坂だ!いっけぇぇええええええ!」

 健太とリョウは、シュールの施設の窓ガラスを割ってしまい、バレない様に逃げていた。逃げる目的地として、この丘上の一本木に決めた様だが・・・


「ゼェッゼェッゼェッ」

 横に転がり込むリョウ。


「逃げ切った!俺達の勝ちだ施設長じじい!!」


 健太とリョウは丘上に着いた。大きな一本木が立っているこの丘は、シュールの施設にいる子供達のお気に入りの場所。


「健太、リョウ、あんた達何してたの?」

 何やら一本木の上から声が聞こえる。声の主はそのまま木の枝から飛び降りて来た。


スタン!!


と、スムーズに3メートル上から着地した人物は・・・


「ちぃ、リサか。お前もこんなところでサボりか?」

 健太に、リサと言われたこの人物は、健太と同じ人間だ。健太の様に違う環境から来たわけではなく、生まれも育ちもピカトーレンの彼女はほぼ毎日健太と口喧嘩をする日々であった。


「はあ?あんた達と一緒にしないでくれる?アタシはねぇ、ここで待ち合わせをしてるの!?」

 リサは呆れる仕草をしながらそう答える。人を苛立たせる天才であった。


「お前なんかを待つ人なんかいるわけ・・・」

「そうだそうだ!健太のいう通りだ!リサなんかを待つ・・・」


 健太とリョウは青ざめた。たった今リサの後ろに現れた人物、それは正にシュケルであった。


「リサよ、待たせたな。山菜採取の手伝いにわざわざすまんな。それとそこのバカ2人!」


「は・・・はい!」×2


ガン!!ガン!!


 2人はかなり強めのゲンコツをいただいた様だ。健太もリョウも頭を抱えて苦しんだ。シュケルはため息を吐き、説教は続く。


「やれやれ、お前達2人の将来が心配だわい、特に健太、お前は・・・」


『お前様よ、貴様の将来なんて心配せんでも良いぞ!』


「に、日本語!!」


どうやらシエルとメルーが健太に接近した様だ。


「久しぶりじゃな!健太こぞう!」


「あんたは・・・確かダークルカン博士!」


「は?」

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