第11話 進歩
先生と過ごし始めて丁度1カ月だろうか。
たまに散歩に行ったり、買い物に出かけたりと割と良い生活が送れている。
もちろん一人での外出は禁じられているが。
先生は昼前と夕方には部屋にこもり作業をしている。新しい仕事なのだろうか。
最近は先生が忙しいらしく、俺が少し家事を手伝っている。
元々料理は得意じゃなかったので先生に一緒にしてもらっている。
少しは味も良くなったと思う。
だいぶこんな生活も慣れてきた。
本も多く読んでいる。本はほとんど先生が持っていたもので進められたものをどんどん読んでいった。十冊は読んだだろう。
先生が持っている本はほとんどがミステリーや恋愛ものだった。文学的なものはあまりなかった。先生の性格的にそういう種類の本を多く読んでいると思っていた。
本は好きだ。邪魔なものが入ってこない。更に言うと、どんな展開になろうと自分にはあまり関係のないものなので、読んでいて気が楽だ。
さっきまで読んでいたのは、恋愛ものの感動系な本だった。
「読み終わりました」
「今回は随分早かったな」
「先生と違って毎日暇ですからね」
「何を今更。どうだった?」
「面白かったですよ。」
「そうか。その割には白けた表情だが?」
「面白いと言っても僕には経験の無いことですからね。共感が出来ませんでした」
「なるほどな。それならもう恋愛ものは止めておくか?」
「いやいいです」
「そうか。読んでみて恋について理解出来たか?」
「どうですかね。人を愛すことが出来たら僕の死にたがりも治りますかね」
「さあな。してみないと分からないものだろう」
この状況で恋をするとなると先生が相手になるだろう。
するにしても、先生には家族の様な感情しかない。今は無理だろう。
先生も俺なんかに恋するはずがないだろう。したとしてもそれは先生を不幸にさせるかもしれない。もしもこの先俺たちの関係に進展があったとしても、半年にはもう終わっているかもしれない。今はこのままがいい。これからもこのままの方がいいかもしれない。
「俺は先生の事、好ましくは思っていますよ。」
「なんだ口説いているのか?今の君じゃ無理だな」
「本気にしないでくださいよ。親愛という意味ですよ」
「いいんだぞ?私相手でも」
「そんなこと言ってるから結婚できないんですよ、先生は」
「君も随分言うようになったじゃないか」
「お互い様でしょう?」
「そうだな」
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