第10話 閑話~日記~
私の罪と罰を日記に書くことにした。
懺悔かもしれない。みっともないかもしれない。
しかし、これは私の罪の記録だ。
~
私の仕事は教師だ。
この仕事は好きだ。しかし私の性格上あまり向いていないのかもしれない。
生徒とは少し距離を開けている。人に向き合うのが得意ではないからだ。
教師とは本来、生徒と向き合って学びを進めていく立場である。
私はそれを避けた。そして生徒を見放している。
幾分かは楽だった。
しかし、楽な方を選ぶと後で楽にならないのが世の道理らしい。
生徒を見放した。その代償を受けなければならない時が来てしまったらしい。
~
佐藤からメールが来た。
一応警察の人に協力してもらってアドレスを伝えたが、こんな形では来てほしくなかった。
あの時何か声を掛けていれば、こんな結果ではなかったのかもしれない。
普通の教師ならば、当たり前にそうしたはずだ。
私は家族を失った生徒すら見捨ててしまった。
更に悪いことにその生徒に自殺行為までさせてしまった。
因果応報だろうか。私の怠惰の結果で一人の罪なき生徒を傷つけてしまった。
私は教師失格どころか人間として失格だろう。
~
警察の人から佐藤に関して色々聞くことにした。
これは罪滅ぼしだ。
彼には親族は少ないらしい。しかもその人が音信不通になったそうだ。
佐藤の住んでいるアパートからの連絡を受けたからだろう。
彼は可哀そうなことに見捨てられた。私と同じようにされて。
警察の人に保護するかどうかの相談を受けた。
しかし私はこれ以上彼を見捨てることはしたくなかった。
わがままだが彼をサポートすることを選んだ。
警察の方々はしぶしぶだが了承してくれた。
もちろん条件は合った。職を失うことと彼の経過を観察しその内容を警察に報告することだ。
そんな条件は今の私にとってはあまり意味をなさない。
~
彼と少し話をした。少しだけ嘘を吐いた。
この嘘はいずれ言わなければならないだろう。
しかし、これは彼に生きる目的を見つけてもらうために必要な一歩目の嘘だ。
ずるい形だが彼と契約をした。半年の期間の。
彼には半年の制約に沿って生きてもらいあとは自由に生きてもらうことにした。
私はその間に、彼に生きる意味や目的を探してもらおうと思う。
もし彼が見つけれない場合は私が寄生する場所になるつもりだ。
それでも死を選ぶのならば私は一緒に死ぬつもりだ。
それでもいいかもしれない。
最悪なシナリオだろう。
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