第4話 失敗
特に何も考えず死ぬことだけを考えた。
家に着き、すぐに浴槽に水を溜めた。ドラマとかでよく見る自殺方法だった。
遺書などは必要ない。書いても誰も読まないだろう。
あぁ。そういえば警察の人に何か送ろう。あの人にはお世話になったから。
ありがとうございました。とだけ書いて転送した。
これで思い返すことも無くなった。
早く楽になりたい。
服はそのままで水に浸かった。少し冷たかったなぁ。
なんのためらいもなくカッターで手首を切った。
あぁ。血が抜けていく感覚がわかる。だんだん頭がぼーっとしてくる。
寒くて眠たくなった。身体の感覚が無くなった。
意識も薄くなってきた。
これは走馬灯だろうか。母の飛び降りる瞬間の記憶だろう。
母が何かを伝えようとしている。
ごめん。何も聞こえない。必死に母の動かす口を見ているが何を言っているのか分からない。謝罪だろうか。弁明だろうか。
なにも分からない。分かるのは母の悲しい表情だけだ。
俺もそっちに行って、直接聞くよ。
目が覚めた。また同じ天井だった。
どうやら、俺はそっちには行けなかったらしい。
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