第3話 悪意

 一カ月がたった。


身体の痣もだいぶ目立たなくなった。骨折した場所も良くなり、リハビリも終わった。

今日が退院する日だった。

警察の人も退院を祝ってくれた。これからはあまり会うことが出来なると言われた。

その代わりにメールアドレスを貰った。暇な時や辛いときはメールをしてきていいと言われた。どこまでもいい人何だろう。でもあまり迷惑は掛けたくない。

担任の先生も一応来てくれた。学校に来るのはひと段落してからでいいと言われた。

たまに家庭訪問とカウンセリングをすると言われた。



両親が亡くなり、祖父母もいない俺は形だけ親戚の人にひきとられることになった。

親戚の人にはそんなに好かれてもおらず、通っている高校から遠いので一人暮らしをすることとなった。

父親の相続金で高校の間は一人暮らしで生活することにした。あまりいい生活が出来るわけではないが我慢するしかなかった。



まだまだ心の整理は終わってないが、一応ひと段落が着いた。

担任の先生に明日から登校するとだけ伝えた。



久々の学校だった。

特に変わったことはなさそうだった。

教室に入るとみんな驚いた顔をしていた。心配をしてくれる人もいた。

席に座ると授業プリントや学校紙などが沢山詰まっていた。

これを持ち帰るとなると骨が折れそうだった。


特に変わった様子もなくいつも通りに授業を受けた。あまり内容は頭に入ってこなかったが。一カ月も受けていないので当然だろう。


昼休みになった。特に話す相手もいない俺は外を眺めながらパンを食していた。

昼休みになると当然会話も増える。

色々な話が耳に入ってきた。

当然久しぶりに来た俺の話が多かった。


俺を心配するような会話をしている人もいた。


しかし俺の耳に入ってくるのは、ほとんど噂の様な話ばかりだった。

「あいつの家族一家心中したらしい」

「父親に殺されかけたらしい」

「家族が人殺しらしい」

など色々な憶測の様な嫌な噂ばかりだった。


担任の先生も教室にいたがそんな噂話をする生徒たちを特に注意するわけでもなく、無関心を貫いていた。人に関心が持てないタイプの人なんだろう。



授業も終わり帰ろうとしていた。噂が広まったからだろうか。沢山の人が興味本位で質問してきた。当然悪意のある質問をしてくる人もいた。多くがそれだった。

「一家心中なのにどうして生きているんだ?」

「父親が人殺しなんだってな」


理解が出来なかった。何故こんなことを赤の他人に言われなきゃならないのか。

噂程度のことをなぜ本人に聞くのか。楽しんでいるのだろうか。

悪意を人にぶつけ相手が嫌がるところを見て楽しんでいるのだろうか。

分からない。



なぜこんなにも人から悪意を向けられないといけないのだろうか。

自分がいちゃいけないからなのか。生きているのがおかしいからなのか。

考えれば考えるだけ分からなくなった。

なぜ自分が嫌な思いまでして生きているのかを。




自殺することを決意した。










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