第2話 心残り
警察が来た。通行人が連絡したのだろうか。
警察の人は俺を見るなり、すぐさま救急車に乗せた。
当然の対応だろう、血まみれの部屋に全身痣だらけでいるのだから。
部屋には父の死体。外には母の死体。それなのに何も聞かれなかった。
配慮だろうか。分からない。
限界だった俺は意識を失った。
目を覚ますと知らない天井だった。救急車で運ばれたのだから当然病院だろう。
近くには看護師さんがいた。彼女は俺の様態を確認すると医師と先ほどの警察の人を連れてきた。
医師には俺の怪我の様態を説明された。身体全体に打撲と骨折が複数個所あり全治するまで入院することとなった。
警察の人には当時の状況の確認をされた。大体のことは合っていた。入院の間にお見舞いがてら相談や話し相手をしてくれるそうだ。
一週間がたった。
見舞いに来る人は警察の人と担任の先生だけだった。
警察の人はいつも楽しい話や今日起こったことなどを話してくれた。親身に寄り添ってくれるいい人だった。この人のおかげで今は救われている。
担任の先生は特に心配する様子もなく、淡々と連絡だけをしてくれた。もともと愛想がない人なので特に気にしていなかった。
昼間は他のことを考えることが出来るが、夜は脳裏に刻まれた出来事が映し出される。当然最初の何日かは寝ることが出来なかった。睡眠薬を利用することでやっと寝ることが出来た。しかし当然の事の様に夢に出てくる。いわゆる悪夢というものだ。
朝起きた時は当然気分が悪くなる。
そんな生活にも慣れ始め、なぜ父があんなことをしているのかを考えていた。
警察の人に聞いても、父の職場や人間関係に特には異常が見つけられなかったそうだ。なら何故あんな憎悪に満ちた顔だったのだろう。何故母は謝っていたのだろう。
そういえば、母は最後になんて言っていたっけな。思い出せない。
母が死ぬ瞬間は目に焼き付いている。しかし思い出せない。
大切な言葉だったはずなのに。
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