第12話 ゲームセンター

 俺は暇つぶしにちょうど良い場所としてゲームセンターで太鼓をたたくゲームをしている。


 それなりのスコアを叩きだして、一息ついているところ、一花さんがゲームセンターに入る。


 その様子は初めて駄菓子屋に来た子供のように好奇心で満ち溢れている。


 彼女が興味を持っていたのは、人気漫画のキャラクターのデザインの巨大ぬいぐるみが入ったクレーンゲーム。


 クレーンゲームというのはそうそうとれるもんじゃない。


 だが、幸いにもぬいぐるみの置き方がクレーンで取れそうな気がしたので、俺は彼女のいるクレーンゲームの近くまで歩く。


 別に、彼女が置き場所に困っていれば無理に取ろうとは思わないが。


 『どうしても欲しい…………欲しいけど……取れるわけないですよね』


 「よければ、俺がとろうか?」


 「いいの?」


 思わずお嬢様キャラではなく素でかえす彼女に俺は微笑み、俺はうなずく。


 数分で取れたので彼女に渡す。


 ぬいぐるみを始めてもらった少女のように抱きしめる一花さん。


 「あの…………」彼女はおずおずと言葉を紡ぐ。


 「うん?」


 「ありがとう…………」


 恥ずかしそうにそっぽを向いて、赤面する彼女に俺は優しい気持ちになる。


 「どういたしまして」


 「あの……猫八さん」


 「なに?」


 「…………いえ、何でもありませんわ」


 『お……思わず、告白するところでしたわ』


 「そうか」


 俺はきにせずゲームセンターを後にした。


 余談だが、彼女がぬいぐるみをもらった時、彼女が無意識に抱き着いてその体の柔らかさに悶絶したのは墓まで持っていく秘密だ。


 俺は帰り路にぽつりとつぶやく。


 「あんなに無邪気な彼女の笑顔初めて見たな……」



 

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