第10話 買い食い

 俺が下校途中、珍しく寄り道をする彼女に目をやる。


 『小腹がすきましたわ…………あまりにも今日のお弁当は少なすぎます、今日はたくさん勉強も運動もしましたのに……』


 珍しく誰もが一度は考える、間食という誘惑について考えを巡らせる彼女。


 『そうだわ、隣にいる彼なら何か買い食いをしているかもしれませんわ!さっすがわたくし!』


 内心、面倒くさいなぁと思いながら俺は高校の帰りにコンビニによく寄り道をしている。


 俺はそそくさとコンビニに行く。


 そして彼女はなぜか堂々と俺の後をついてくる。


 それはそれで不自然だと思うが。


 俺は店員から注文した唐揚げ棒をもらう。


 これと百円のジュースが合うんだよなぁ。


 彼女も同じものを頼んだ。


 俺が先を歩き、彼女が後ろを歩く。


 そして俺と一花さんは同時に唐揚げ棒にかぶりつく。


 「うまい」


 『やだ、おいひぃじゃない!』


 「ふっ…………まぁまぁね」と現実の彼女は言う。


 わざわざついてきて素直に庶民の味を褒められないのもお嬢様キャラのつらいところだな。


 青い空と白い雲、不思議な距離感の俺と彼女はともに下校しましたとさ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る