第8話 胸ちら

 今日もごく普通の日常をおくっている。


 隣の彼女の心の声が聞こえることを除いて。


 『やらかしましたわ……!?』

 

 何をやらかしたのかは深くは聞かないでおこう。


 俺は水筒の水を飲む。


 『今日、ブラをつけ忘れてしまいましたわ!』


 俺は激しくむせた。


 なんだってそんなミスをするんだよ。


 俺はちらっと彼女の胸元を見てしまった。


 「……じろじろ見ないでくれる?」


 「すみません」


 『こちらこそ、本当にごめんなさい、私ってば淫乱に思われていないかしらぁあ』

 

 半泣きの声で泣き言を言っているが、純情なる男子高校生に隣の女子がノーブラだと知っているとさすがに来るものがある。


 悶々として過ごす羽目になった。

 

 帰りのチャイムが鳴る。

 

 『朝のホームルームの後すぐにトイレで応急措置として絆創膏を張っておいてよかったですわ!』


 そんな心の声を聞いて俺は「一日中……絆創膏をつけていたのか……!?」と内心驚いたが、それを口にすればあらぬ誤解を受けてしまう。


 俺は妄想に浸りながら帰りましたとさ。


 

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