第6話 風

 春風というものは、心地よい暖かさを運んでくれる。


 気持ちよい朝。


 美味しい朝ごはん。


 それと。


 無言で歩く一花さん。


 『今日も猫八様を振り向かせて見せますわ!』


 彼女は真顔で俺を堕とす決意に満ち溢れていた。


 風というのは俺達高校男子と同じちょっぴりエッチなので、低空の風がスカートをめくろうとする。


 女子高生は当然のごとくガードする。


 一花も例外ではない。


 だがその心の中では。


 『今日は黒のレースの勝負下着ですから、見えたら大変なことになっていましたわ!』


 俺は内心、いやいや、隠してもそれじゃあ意味ないだろうと思った。


 まったく、いたずらな風のせいでとんだ欲求不満な時間を過ごす羽目になるとはな。


 どうでもいいが優雅な彼女の歩き方はモデルのようにお尻が左右に少し揺れるのでそれが黒のレースの勝負下着だと思うと、とんでもねぇな。


 まぁそんなこんなで俺は一日中悶々としながら健全に学校を過ごしたとさ。

 

 

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