第5話 昼ごはん
昼飯の時間。
俺は手作り弁当を取り出す。
一瞬、一花の瞳がきゅぴーんと輝いたのは気のせいだろうか。
『毎日、猫八様のお弁当を見ていました、さぁ今日はどんなお弁当なのかしら、一体どんな女がその弁当をつくったんですの!?』
俺は彼女の心の声を無視して、一人生姜焼き弁当に舌鼓。
「やっぱ自分で作る弁当はうまいなぁ」
『て、手作り!?』
俺は彼女が真顔で涎を垂らすのが面白いけど視線を無視して食べる。
彼女は黙々と自分の弁当を食べ終える。
食うの早。
まぁ女子の弁当って男子からすれば、それで足りるのかっていう疑問がわくぐらいちっちゃいときあるよな。
彼女はそそくさと弁当を片付ける。
時折ちらりとこちらを見ては。
『あぁ。毎日プロの料理人によってしか作られない私の弁当、確かに美味ではあるのだけれど、庶民の欲望ばかりの弁当にも憧れを抱いてしまうわ』
俺は無視する。
だって俺のほうから俺の弁当がほしいかといえば変だろう。
—————きゅう。
そんなことを少し考えたことの彼女の答えとして腹の虫が鳴る。
彼女は無言で赤面した顔を震わせていた。
「あの、食べます?」
「い……いらないわ」
『これじゃあ私が庶民の弁当をねだっているみたいじゃないの、はしたない』
「そうですか」
「ど……どうしてもというならもらってあげてもよくてよ」
「じゃあ、どうしてもご賞味くださいませ」
そういって俺は冗談半分に弁当を渡す。
「まぁまぁね」
一番大きな豚の生姜焼きを頬張った彼女の眼は一瞬輝く。
『おいしいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、ぶ」
そこから先は彼女のイメージが壊れるので書かないでおこう。
喜んでくれて何よりだ。
さぁ、午後の授業も頑張ろうっと。
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